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シリーズ初戦で勝ちパターンが崩れた衝撃…オリックスの逆転を招いた“ゲームチェンジャー”と“たった1つのミス”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/11/21 12:10
守護神マクガフがピンチを招き、マウンドに集まるヤクルト内野陣。初戦から、勝ちパターンが崩れてしまった
1打席に集中する代打屋稼業は、むしろ打席への集中力が高まるという部分で、力を発揮する舞台を得たようなものだった。ワクチン接種の副反応や股関節痛などによる戦線離脱もあったが、それでも代打での成績は28打数12安打の打率4割2分9厘。高い成功率を誇り、まさに“切り札”として新しいポジションを確立したシーズンだったのである。
ジョーンズの“ゲームチェンジャー”としての存在感
そして何より野手最年長の36歳ながら、ムードメーカーに徹してベンチからチームを盛り上げてきた。同時に自ら率先してイニング間の外野手とのキャッチボールを行うなど献身力の高さを若い選手たちは見て、肌で感じていた。
だから“AJ”が打つとチームのムードがガラッと変わる。ゲームチェンジャーとしての存在感の大きさをチームメイトが知っているからこそ、ジョーンズが奪いとった1つの四球が、試合の流れを大きく変えることになっていくのである。
この四球で無死一、二塁となると、1番に戻った福田周平内野手が三塁線に送りバント。これをマクガフが間に合わない三塁に投げて犠打野選となり満塁。あとはその勢いに乗って、一気呵成に攻め立てるだけだった。
「後ろに(吉田)正尚さんとかラオウさん(杉本裕太郎外野手)がいたので、別に三振もOKのつもりで、当てにいかないように心がけました」
同点打を放った宗佑磨内野手だ。
吉田正尚「いやあ痺れました」
カウント1ボール2ストライクから真ん中低めに落ちるスプリットをうまく拾って中前に放った同点タイムリー。そして決着をつけたのは、やはりこの男だ。
この試合ではヤクルト先発の奥川恭伸投手の前に、序盤で2度も得点圏に走者を置きながら凡退を繰り返してきた。その屈辱を晴らすラストチャンスに吉田はバットを振り抜いた。
「いやあ痺れました。宗がこれまでにないくらい球場を盛り上げてくれたので、その勢いで行かせていただきました」