「結婚してみたら、付き合ってる時は見えなかった所が急に見え始めて……ってことあるじゃないですか。おんなじですよ。指名して、半分、身内みたいになった途端に、見えなかった所が見えてくる。そりゃあ、やなもんですよ、指名した後に実戦見るのは、私も経験あるけど。いいとこ見せてくれればいいけど、反対の場合が多いんだ。人には言えんけど、なんでこんなの獲ったんだろ……って思ったこともありますよ」

　今年はいないから気楽……と笑ったスカウトは、その選手の打席のたびにトイレ行ってましたよと、もう一度笑った。

神奈川大はDeNA6位指名の梶原が抜けるが…

　前述の通り、この大会は優勝、準優勝の2チームが「神宮」に進めるから、「決戦」は準決勝になる。

　中日ドラゴンズ1位指名のブライト健太外野手（4年・183cm89kg・右投右打・都立葛飾野高）の上武大が、準決勝で地元・神奈川大と当たった。

　今秋のリーグ優勝を果たした神奈川大、来季も強いチームになりそうだ。

　庄子雄大三塁手（176cm75kg・右投左打・横浜高）と、渡邊温人左翼手（177cm73kg・右投右打・大分商高）は、とんでもなく足の速い1年生の1、2番コンビ。クリーンアップからは、横浜DeNA6位指名の梶原昂希中堅手（4年・189cm85kg・右投左打・大分雄城台高）が抜けるだけだし、何より試合を託せる実力を持った本格派右腕2枚が、来季も健在だ。

　その1人、川合勇気投手（3年・181cm86kg・右投左打・掛川西高）の粘り強い投球が続く。

　初回、二塁打2本と四球で作ったピンチを、打者の懐に143キロ、144キロの速球をきめて、結局3三振を奪ってきり抜ける。

　川合投手がいいのは、たとえ死球を出してしまっても、さらに内角を攻め続ける技術と気迫と自信があることだ。磨いてきたスキルを押し立てて、オレのピッチングはこうなんだ！と主張のある投球をする。強気のピッチングの本質とは、それだ。

　川合の投げっぷりを見ていると「そこ」がきっちり出来ているから、それがそのまま彼の投球の「威圧感」となって、上武大の強打者たちを圧倒できている。

　3回、4番・ブライト健太にぶつけた後にも、前日の武蔵大戦で、左中間最深部のスタンド中段に伸びっぱなしのライナー弾を叩き込んだ5番・小山忍捕手にも臆せず「イン」を攻め、最後は体を飛びのかせるような内角速球で三振にきってとった。

　まさにその名の通り、勇気ある投球がキラリと光って見えた。

「悔しいっす」ブライト健太の涙が止まらない

　最終回、神奈川大の4番・土井克也捕手（3年・180cm83kg・右投右打・唐津商高）が、打った瞬間！のサヨナラ2ランをレフト中段に放り込んで決着したが、注目の上武大・ブライト健太は終始、精彩がないままに学生野球生活を終えた。

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