プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“負けるべくして負けた”巨人軍…山口寿一オーナーも嘆いた、原辰徳監督がクリアすべき《大きすぎる課題》とは
posted2021/11/13 17:03
CSファイナルステージでヤクルトに敗れ、3年連続日本シリーズ進出はならなかった巨人・原監督
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」とは江戸時代の大名であり文人としても知られた松浦静山の言葉である。この言葉が広く知れ渡るようになったのは、亡くなった野村克也元ヤクルト監督が勝負の真髄として紹介してからだった。
リーグ優勝したヤクルトと3位でファーストステージを勝ち上がってきた巨人とのセ・リーグのクライマックスシリーズ（CS）、ファイナルステージの結果も、まさにこの言葉通りのものとなった。
勝負のポイントは第2戦の敬遠策
アドバンテージの1勝を含む3勝1分けという結果でのヤクルトの日本シリーズ進出。勝負のポイントは第2戦の6回2死二、三塁で巨人・原辰徳監督が決断した敬遠策だった。
この回先頭の村上宗隆内野手の左翼右への安打をスライディングキャッチしようとしたゼラス・ウィーラー外野手が後逸（記録は二塁打）。続くドミンゴ・サンタナ外野手の遊撃への当たりの処理を坂本勇人内野手がもたつき一塁に悪送球してヤクルトのチャンスはグッと広がった。
しかし中4日で先発した巨人・菅野智之投手もエースの意地を見せて踏ん張る。送りバントの1死二、三塁からホセ・オスナ内野手を最後は148kmの真っ直ぐで空振り三振に仕留めて2死。そして打席に8番・西浦直亨内野手を迎えたところで原監督が敬遠の指示を出したのだ。
次打者は高橋奎二投手。もちろんベンチにはヤクルトの代打の切り札・川端慎吾内野手がいることも計算済みだった。
「流れが我が軍になかなか来ないというところでね。動いて、相手を動かして……。そしてそういう形でいくというね」
リスクを背負ってでもエースを信じて勝負に出た
ここまでヒット2本に抑え込まれていた高橋に代打を送らせて、流れを変えようという目論見だった。もちろん西浦と川端を比較してどちらとの勝負がリスクが高いかは百も承知である。
しかし——。
