マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトから1カ月…中日ドラ1・ブライト健太22歳の涙が止まらない「悔しいっす」「自分の青春でいちばん充実した4年間でしたから」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/11/12 17:10
10月11日のドラフト会議で中日ドラゴンズに1位指名されたブライト健太(上武大4年・外野手)
「練習します!」
待ったなしで返してくれた最後のひと言だけが、かろうじて笑顔だった。
大勢の人たちの熱い視線を一身に浴びることに、まだ慣れていないだけなのだ。
そりゃ、そうだろう。
高校は都立学校の野球部で、高校球児として注目を浴びたり、大きな活字になったこともなく、大学だって体作りを優先させて、途中ケガもあったりで、3年生まではほとんど試合にも出ていない。やっとこの春から活躍し始めたばかりの「新鋭」なのだ。
全国デビューの舞台になった「大学選手権」でのバッティングの爆発力がすご過ぎたから、メディアの報道も一気にヒートアップしたものだ。私自身もその片棒をかついだ一人だから、反省もしている。
ちょっと持ち上げ過ぎたかな……でも、持ち上げたくなるようなキラキラした魅力を、いくつも併せ持った逸材であることも間違いないのだ。
秋のリーグ戦に勝利しながら、この大会に敗れて学生野球に終止符を打つ選手たち。
快晴の青空と、オレンジ色の夕陽が美しい秋の横浜スタジアムでの時間は、きっと大切な一生の思い出になるだろう。
そして、いつの日か、家族で野球見物に訪れたこの球場で、
「お父さんはなぁ、学生の頃、この球場でなぁ……」
そんな自慢話を家族に披露できるような、そんな人生を送ってほしいなぁ、などとつい思ってしまう晩秋の野球の現場であった。<高校野球編から続く>