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ドラフトから1カ月…中日ドラ1・ブライト健太22歳の涙が止まらない「悔しいっす」「自分の青春でいちばん充実した4年間でしたから」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/11/12 17:10
10月11日のドラフト会議で中日ドラゴンズに1位指名されたブライト健太(上武大4年・外野手)
西武6位指名の中山誠吾遊撃手(190cm99kg・右投左打・青藍泰斗高)が5番を打つ白鴎大の強打線を相手に、6回途中まで5安打3失点。芯で捉えられたのは、左打者2人に打たれた本塁打と二塁打だけで、4年間の努力の跡が十分にうかがえる内容だ。
体格は文句なし、加えてここまで「ピッチング」という仕事が出来るようになったのなら、あとは経験値だ。ならば「巨人三軍」もよいが、強豪社会人で口から胃袋が飛び出しそうな緊張感のマウンドで2年間勉強したら……。そんな「余計なお世話」が、ついつい頭をよぎってしまう。
来秋ドラフト「1位重複でも、全然おかしくない」
投げ合った白鴎大・曽谷龍平投手。この左腕も、なかなかに食えないヤツだ。この「食えないヤツ」というのは、最高の誉め言葉なのだ。
秋のリーグ戦で見ていたそのまんまの投球を、飄々と体現していく。
バッティングピッチャーのような力感から、長いリーチを体に巻きつけるようなしなやかさでヒョイヒョイと投げて、これが立ち上がりから148~150キロを続けるので、見ているこちらも驚くが、もっと驚いているのは、打席で向き合う桐蔭横浜大のバッターたちだろう。
リーグ戦の映像は研究してきたのだろうが、実際のボールの体感はまるで違う。スイッ、スイッと腕を振って、コンスタントに140キロ後半から150キロの左腕。しかも、スリークォーターの角度なら、初めて当たるピッチャーだろう。今のプロなら、さしずめ、阪神・高橋遥人か。
スライダーでも、ツーシーム系のスッと沈むボールでもカウントをとれて、勝負球として使う時はさらに精度が上がる。
すごいサウスポーが出てきたぞ。攻略困難とみて、三塁線にセーフティを転がしてみても、サッとマウンドを下りて、鮮やかな時計まわりの回転でさばいてしまう。
「こういうのが、ピッチャーなんだなぁ……」
妙に丸っこくないのがいい。スリムな体が可動域広く、キビキビと動いて、アウトを重ねていく。特にサウスポーの場合は、ほんとはこれぐらいスッキリした見た目のほうがいいのかもしれない。
150キロ近い球速帯を試合終盤まで維持できて、いつでもストライクがとれる変化球が最低2種類あって、1試合平均3四球のコントロール。加えて、クイックもフィールディングも達者にこなすスリークォーターの左腕なんて、今年のドラフトにだっていなかった。
白鴎大・曽谷龍平、「2022ドラフト」の1位重複でも全然おかしくない。
プロ野球スカウト「なんでこんなの獲ったんだろ…」
毎年、ドラフトの後に行われる「関東地区大学野球選手権」。当然、指名された大学選手が何人も出場するから、指名した球団のスカウトたちが、そのプレーぶりを心配そうに見つめている。