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10代で“スケート界の伝説”になった日本人兄弟「安床ブラザーズ」を知っていますか?《2人で世界タイトル100超》
posted2021/11/13 17:00
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
UNIPHOTO PRESS
彼らが取った金メダルに象徴されるように、今や日本が、エクストリームスポーツ大国なのは間違いない。では現在のブームの起点にあるのは、どのような熱源だろうか? 堀米雄斗に先駆けて20年前に、インラインスケートで全米を席巻した日本人スケーターに話を聞いた(全2回の1回目/後編へ続く)。
2004年夏、アメリカ・ロサンゼルス。大観衆の視線は、巨大な半円状の台を車輪が一列に並んだ靴で滑るスケーターに集中し、彼らが小柄な身体をダイナミックに反らして宙高く舞い上がるたび、一斉に熱狂の叫び声が上がった。
中継するスポーツ専用チャンネル“ESPN”のアナウンサーは、「ヤストコ!」の名を連呼する。
「信じられない高さだ! 2回転したぞ!」
絶叫の賛辞を浴びながら、当時18歳のタケシ・ヤストコは圧倒的な1位に、そして3歳年上の兄エイトも3位につけた。
スケート界を席巻した“ヤストコ・ブラザーズ”とは
エクストリームスポーツの世界頂上決戦、Xゲームズ。そのアグレッシブ・インラインスケートのバート部門を席巻した“ヤストコ・ブラザーズ”の名はこの日、ESPNのハイライトでも、繰り返し叫ばれ続けた(私事で恐縮だが、この年にロサンゼルスに移り住んだばかりだった筆者の胸に、「ヤストコ」の軽やかな響きは、「こんなにすごい日本人がいるんだ」という喜びと共に深く刻みこまれた)。
あれから、17年。
神戸市六甲アイランドの“g”スケートパークを訪れると、事務所の奥からガッシリした体躯の青年が首を伸ばして顔をのぞかせ、「あ、僕がヤストコです」と人懐っこい笑みを広げた。
丁寧に腰を折り差し出される名刺には、宙に舞うスケーターの写真の下に「安床栄人(やすとこ・えいと)」と書かれている。まちがいなく、あの“ヤストコ・ブラザーズ”の兄だ。
2000年代にインラインスケート界を席巻した栄人と武士は、Xゲームズをはじめとする世界大会で、それぞれ100以上のメダルを獲得。栄人が開発した、空中で身体を3回ひねる“1080カリフォルニアロール”などの大技は、未だに他の誰もマネできない究極のオリジナルトリックだ。