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<鈴木誠也メジャー流出?>「中継ぎ起用と機動力野球の復活」佐々岡監督が“自覚”する来季カープ浮上のカギとは?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2021/11/09 11:02
連日のようにメジャー挑戦が報じられる鈴木(左)と国内FA権を取得した大瀬良(右)。主砲とエースの来季の動向に注目が集まる
二軍で防御率2.78だった今村猛も、昨季抑えを経験した一岡竜司も一軍に呼ばれることはなかった。勝ちパターン入りした中継ぎ投手が調子を落とすと、役割を変えて一軍で起用し続けた。球団幹部の「一軍に残すことで相手打者に嫌なイメージではなく、楽なイメージを与えてしまっていたように思う。だから、いいところで投げられるようになっても、相手に嫌がられていないように感じた」という指摘に納得させられる。一、二軍の入れ替えが少ないチーム状況は、二軍選手のモチベーションにも影響したように感じられる。
秋季練習では、一岡だけでなく、一軍であまり登板機会を与えられなかった中崎翔太や中田廉といった3連覇を支えた中堅も紅白戦で登板機会を与えるという。当然彼らも結果を残せば、来年春の一軍キャンプに呼ばれる。若手だけでなく、経験ある投手の存在もまたブルペンに与える影響は大きい。
実績ある投手の復調は、底上げにつながる。9回打ち切りではなく、延長12回となる可能性もある来季は、より中継ぎ力が鍵を握ることになるだろう。
得点力改善への課題
佐々岡監督は攻撃面の課題についても言及した。
「若い選手が出てきたという中、野手にもいろんな反省、課題はある。(チーム)打率はあってもなかなか1点がとれないとか、いろんな細かいこともあった」
リーグトップのチーム打率.264を残しながらも、得点数はリーグ3位の557得点に終わった。何度、試合終了後に「あと1本が出なかった」という嘆きを耳にしただろうか。
外国人の不振は大きく響いた。ただ、得点圏打率.262がリーグ2位だったことを考えると、広島打線が「チャンスに弱かった」わけではなかったことが分かる。
得点力が伸びなかった原因は「あと1本が出なかった」ことだけではない。指揮官が言った「細かいこと」に得点力改善の鍵があるのかもしれない。
今季、三塁を狙える場面でも二塁ベース手前でスピードを緩めて進塁できなかった走塁が散見された。できていたことができないと、攻撃のリズムも悪くなる。乗り切れない。広島伝統の機動力は盗塁数やエンドランというより、隙をついた先の塁を狙う積極走塁にあった。
来季はチーム打撃3部門トップの鈴木誠也が、ポスティングにより米大リーグに移籍する可能性もある。大きな得点源の流失となれば、より攻撃の緻密さが求められる。
佐々岡監督が「世間では“閉幕ダッシュ”とか言われているけど……」と自嘲気味に笑ったように、チームは2年続けてシーズン終盤に安定した今季は9月以降の46試合で26勝18敗2分け。昨季も10月以降の34試合で19勝11敗4分だった。就任3年目の来季は“開幕ダッシュ”とまではいかなくとも、序盤から安定した戦いをしたい。短期集中型となる秋季練習は大事な一歩となりそうだ。