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《引退》鳥谷敬「怒るという感情は一番、無駄だよね」「始まりと終わりはセット」元阪神番記者のロッテ広報が明かす“18年間貫いた信念”
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2021/11/04 11:03
引退会見で感謝の言葉を述べた鳥谷敬。涙なし、すべてをやり切った男の表情だった
確かに彼の現役生活においてグラウンドで喜怒哀楽を表現したところは見たことがない。無表情ゆえに怖そうなイメージが付きまとう時はあるが、怒りを露わにされたことは一度もないし、誰かに対してそのような態度を取ったところを見たことも一度もない。そしてなによりも彼が言っている怒るメリットを月日が経った今でも私は明確に答えられない。むしろ、現代社会にあっては怒らない方が正しい対応だと改めて思う。
そんな風に鳥谷の言葉にはいつもハッとさせられる。彼が引退を決意した今、もう少しその言葉を思い出してみようと思う。
「大事なのは年齢じゃない」
「大事なのは年齢じゃない。年の取り方、どのような日々を過ごしてきたかだと思う」
誕生日のたびに論じられた。人はどうしても30代だからとか、40代だからとひとくくりにして単純化してしまうが、それはあくまで数字上のことでなにも意味をなさないと鳥谷は考えていた。大事なのはどんな風にその1年を過ごし、成長したか。なにもせず、成長をしていないなら歳の数など関係ないのである。
これと同じような考え方の部分もあるが、40代になって私が健康志向に目覚めると笑われた。「今から始めてもアンチエイジングにはならない。そういうのは身体が悪くなってからや弱ってから急に始めるのではなくて前もってやるもの」。そういう鳥谷は20代の頃から40代の自分を意識し、行動し、トレーニングを行い、食事を研究した。
プロに入団をした時の目標が「40歳でショートを守ること」。40歳になった今年も若手に負けない動きで溌剌としたプレーが出来たのは若い頃からそこを目標に積み重ねたから。凄いと驚く周囲の声も、本人からしてみれば当たり前の結果だった。