走攻守揃った“野球偏差値”の高い選手は前述したように高校、大学の段階で指名される。そこから漏れた独立リーガーからは「なんでもそこそこできる」ではなく「何か1つずば抜けたものを持っている」選手が指名されるのだ。

　徳島インディゴソックスからは昨年に続き2名が指名された。いずれも育成だが、DeNA育成1位の外野手・村川凪は「足」、西武育成1位の捕手・古市尊は「肩」が現状での武器といえる選手だ。当コラムでも書いたが、徳島球団は他の能力が低いことを承知で2人を使い続けた。

　古市はシーズン終盤でも途中交代させられることがあり、打撃成績も芳しいとは言えない。それでも、NPBのスカウトは違うところを見ている。「足りないところは入ってから伸ばせばいい。何か光るものがある“素材”を」と考えているからだ。

ドラフト指名で写真に応じる石森の一方、ほかの4人は

　火の国の会見場では、石森大誠の指名が決まると、すぐに記者会見のテーブルがセットされ、石森を挟んで馬原監督、神田社長が並んで座り、記者会見が始まった。

　地元のテレビ局は夕方のニュースに間に合わせるために、次々とマイクを石森に突き出した。続いて馬原監督とのツーショット写真、さらにはホテルの階上に出て「熊本城の夜景を背景ににっこり」写真撮影も行われた。

熊本城をバックに笑顔の石森　©Kou Hiroo

　それは実に華やかなイベントだったが、この間、石森以外の4人のドラフト候補選手はずっと会場で座っている。

　毎年のことだが「指名される、されない」で、残酷なまでに明暗が分かれてしまうのが、ドラフト会議なのだ。

　ドラフト会議は8時過ぎまで続いた。結局、火の国サラマンダーズから他の選手が呼ばれることはなかった。その中には筆者が話を聞いた選手もいた。彼らの未来が明るいことを願わずにいられない。

©Kou Hiroo