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<中日1位>ブライト健太《3年前の脱走事件》同級生4人が説得「足立区の実家まで追いかけて…」、歌ったケツメイシ『仲間』 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2021/10/12 11:05

<中日1位>ブライト健太《3年前の脱走事件》同級生4人が説得「足立区の実家まで追いかけて…」、歌ったケツメイシ『仲間』<Number Web> photograph by Yu Takagi

中日ドラゴンズに1位指名されたブライト健太(上武大4年・外野手)。「春の覚醒」の裏には、仲間たちとの知られざるエピソードがあった

 リーグ戦で山梨へ遠征中だった佐々木優大コーチに電話をし、谷口英規監督に承諾を得ると、最も仲の良かった井上力斗と学年リーダーだった山脇彰太、副リーダーだった岩本淳太、マネージャーの角永浩武の4人で、ブライトの実家へ説得に向かった。

 作戦としては「戻ってこい」とプレッシャーや義務感を与えるのではなく、友人として「戻って来てほしい」という思いをストレートに伝えること。事前に電話してブライトが帰ってきていることを確認した4人は部屋に上げてもらうと、井上を除く3人が母・陽子さんと、井上はブライトと2人きりになって、話をじっくり聞いた。

「ブライトは申し訳なさそうな顔をしていました。何が苦しかったのかを本人に聞きました。いろいろと蓄積したことがあったようで泣いていました。 “もっと楽に、やりたいことを人の顔色を気にせずやればいいよ”と伝えました」(井上)

 3人は陽子さんに熱く語りかけた。

「初めてで慣れない寮生活かもしれないけど、楽しんでいる時はすごく楽しんでいるんです」
「3年後絶対に大きな戦力になるので辞めさせたくないんです」
「どんなサポートでもしますから」

 陽子さんもそんな彼らの表情と姿に胸を打たれ、「ウチの子をこんなに心配してくれるなんて」と涙を流した。

 4人はその後、ブライトをカラオケへ連れ出し、ケツメイシの『仲間』を熱唱。「また歌おうな」と言って、東京を後にした。

 そしてブライトは3日後、寮に戻ってきた。

「ここまで迷惑をかけてしまったのに、こんなに仲間が心配してくれている。このままではダメだと思いました。あれで覚悟が決まりました。腹を括りました」

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