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「ポイントガード像を突き詰めたい」8シーズンぶりに主将を返上、“ヒラ”の選手に戻った川崎・篠山竜青が語った本音とは?
text by
吉川哲彦Akihiko Yoshikawa
photograph byB.LEAGUE
posted2021/10/08 17:00
横浜との開幕節は1戦目で4得点8アシスト、2戦目に2得点4アシストを記録。ディフェンスでも存在感を見せた篠山
何故キャプテンの座を藤井に譲ったのか?
ところで、8シーズンぶりに“ヒラ”の選手に戻った篠山は、何故キャプテンの座を藤井に譲ったのか。これは川崎ファンならずとも気になるところだろう。佐藤HCは就任以来、新シーズンのチーム始動時に篠山との話し合いの場を設け、そこで本人に「やりたいかどうか」を確認しているとのことだが、篠山の返事はいつも決まって「どちらでもないです」だという。
「やってほしいと言われれば全力でやりますし、でももう長くやってきたので新陳代謝というか、若い選手にそういう立場を任せることも必要。自分がやりたいということは全くなかったので、今シーズンに関しても同じように答えました」(篠山)
しかし、その後一旦答えを保留して家に帰り、「奥さんとも話をして、ここが一区切りなんじゃないか」と思った篠山は、佐藤HCに「(キャプテンから)あがれるのであればあがりたい」と伝えるに至った。
選手には移籍や引退など、競技人生の転機が必ず訪れる。しかし、その移籍や引退自体が節目なのではなく、何らかの出来事が節目となって、選手は移籍や引退の決断を下すのだ。今回、篠山にはその節目となる出来事がいくつも重なった。
「肩の荷が下りた感じはあるか」という問いに……
「(日本)代表選手として、出ようが出まいがオリンピックは選手としての1つの区切りと思ってやってきました。チームとしても、辻(直人)選手の移籍でリスタートというところがありましたし、会社員時代からずっと一緒にやってきた中で、彼が新しい道を選んだことには自分も改めて考えさせられた。そういったいろんなことが重なって、『自分としてはここが区切りだな』とストンと落ちた感覚がありました」
その重責を7シーズンも務めてきたとあって、類稀なキャプテンシーを持つ篠山もさすがに解放感があるらしく、「肩の荷が下りた感じはあるか」という問いに「ありますね」と即答。続けて出た「少なからず気楽になりました」という言葉には、その肩書の重みを誰よりも知る自覚が垣間見える。
「初めてキャプテンになった時は実業団チームで、バスケットだけではなく社会人としての教育の側面もあるようなチームカラーだったんですよね。特に(入団した当時の)東芝はそういうところがあって、キャプテンが何をするべきかということは指導されてきて、川崎もその延長線上でした。キャプテンという立場の重要性は、無意識に近い状態で意識していたと思います」