三食見学ツアーBACK NUMBER
渡嘉敷来夢/女子バスケットボール
「“食う寝る練習”が作る強い身体」
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/09/06 06:00
「早く試合に出たい」と10月8日の開幕戦を心待ちに
―――モデルと見紛う長身の秘密は寿司ネタの貝にあり?―――
朝焼けに染まる首都高を千葉県の柏に向かって走る。目的地に近付くにつれ、ダッシュボードの外気温計は上昇していく。立秋は過ぎたが、秋の気配はまったく感じられない。
熱帯夜のせいで寝付きが悪かったのか、単に朝が弱いのかは分からないが、寮の食堂にはいってきた渡嘉敷来夢(らむ)選手の表情はまだぼんやりとしていた。彼女は女子バスケットボールの実業団、JXサンフラワーズへ今年4月に入団した期待の新人である。手足が長く、顔が小さいというファッションモデルばりのプロポーションのおかげで、遠目から見るとそれほど背が高いようには見えない。だが、それは目の錯覚で、横に並ぶと首を曲げて見上げるはめになる。だまし絵みたいな体形だ。
「身長がぐんと伸びたのは中学生のころですね。入学式のときは170cmだったのが、卒業するときには185cmになってました」
その後も順調に伸び続け、現在は191cm。背が高くなる秘密の食べ物でもあるのだろうか?
「好きな食べ物はお寿司です。特に貝類には目がないんですよねえ。でも焼き魚とか煮魚はけっこう苦手です……」
乳製品や小魚が成長期には欠かせないとは聞いたことがあるけれど、赤貝やミル貝が背丈の伸長に効果があるとは初耳だ。
「毎日食べてたわけじゃない(笑)。196cmある父の血を受け継いだんですかね」
背を伸ばすコツは朝食後の二度寝にあり!?
午前8時前に朝食を食べ終えると、10時に練習がはじまるまで二度寝するのが日課だという。よく食べて、よく眠るのも背を伸ばすコツなのか……いや、違うな。こちらも寝しなに食べることなど日常茶飯事だが、横幅と体重が増えるだけだ。神様は不公平である。
外は35度を超える酷暑だというのに、体育館の中はひんやりと涼しい。エアコンのスイッチを見ると設定温度は21度になっていて、いささか肌寒いぐらいである。それでも選手たちは流れる汗をタオルで拭い、シュート練習に打ち込んでいる。渡嘉敷選手ほどの身長があれば、ダンクも易々と決められるだろうに、レイアップシュートを幾たびも繰り返す。
「ちょっとジャンプすればリングにはぶら下がれるし、ダンクもその気になれば狙える。でも、正確なシュートを打つほうが大事だと思っているので、執着はありません。個人技よりもチームプレーにこだわりたいんです」
昼食の梅ごはんにはいっていた薬味の大葉に「これも苦手」と顔をしかめながら、ポリシーを語る。「栄養のこととかはまだ勉強不足で分からないけど、作ってくれる方に申し訳ないので残さずに食べます」と完食した。