レースを終えたときの彼のコメントは、なるほどなあと思うことばかりだった。そのひとつが「金曜日の走行で右腕の負担が大きかったので、日曜日の決勝に向けて土曜日は無理をせず右腕を休ませた」というもの。それが7年連続でPPを獲得したサーキットで「予選3番手でいい」と思わせた理由だった。マルケスは日曜日の決勝に向けて疲労を蓄積させない作戦を採った。つまり、金曜日を走った時点で「勝てる」と確信し、そのために土曜日は負担を軽くして日曜日の決勝に焦点を絞ったのだ。

予選3番手からスタートしたマルケスは、1コーナーでトップを奪うと、その後は危なげない走りで独走のままチェッカーを受けた

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　これでマルケスはCOTAで7勝目。左コーナーで世界最速のマルケスは、左回りのコースが多いアメリカでは驚異的に強い。過去アメリカ大会が開催されたラグナセカ、インディアナポリスでは負け知らずで、アメリカ開催のMotoGPクラスだけで12戦11勝というリザルトを残している。今季、怪我から復帰して6戦目に優勝したドイツのザクセンリンクも左回りのサーキットだった。

　MotoGPクラス9年目。今回の勝利も加えると141戦して58勝という戦績が示すように、マルケスはもちろん右回りのサーキットでも普通に強くて速い。昨年は怪我でシーズンを棒に振り、復帰した今年も回復途上の右腕の影響で思うような戦いができない状態が続いているが、そんなマルケスが得意のサーキットで見せた走りは、絶対王者の貫禄を見せつけるものだった。

速さに直結する王者の身体能力

　左コーナーが速い理由について、マルケスは「普段のトレーニングに取り入れているモトクロスやダートトラックでも左コーナーは速い」とコメントしている。バイクはフロントブレーキは右手、リアブレーキは右足で操作する。そのため、通常は左コーナーの方が乗りやすい。右コーナーと左コーナーのライディングの違いを生む要因を是正するため、左手で操作するハンドリアブレーキを利用する選手は多く、マルケスもそのひとりである。

　得意の左コーナーを含め、マルケスのライディングは明らかに速い、という事実について、いろんな人がいろんな形で分析をする。本人のコメントだったり、データを駆使してその違いを語るが、コースサイドで写真を撮っている僕が見るマルケスは、2輪のロードレースがスポーツだということをもっとも感じさせてくれる選手である。

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