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《CLでマドリー撃破のモルドバ王者》は謎が多すぎる 「地下室に連れていかれると武装警官だらけ」、創設者は元KGB… 

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フローラン・ダバディ

フローラン・ダバディFlorent Dabadie

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posted2021/10/06 17:01

《CLでマドリー撃破のモルドバ王者》は謎が多すぎる 「地下室に連れていかれると武装警官だらけ」、創設者は元KGB…<Number Web> photograph by Getty Images

「謎のクラブ」に思わぬ敗戦を喫した白い巨人マドリー。後半途中から出場したルカ・モドリッチもがっくり

 それでも、2016-17シーズンをFCシェリフで過ごしたフランス人選手のシリル・バヤラは「フランス・リーグのほとんどのクラブより給料が高い」と言っています。ならば……、ボーナスも含めて、選手の給料が現金で渡されているのでしょうか。シェリフという企業の売り上げは沿ドニエストル全体の3分の1ですから、トルコのクラブ程度の予算はあるはずです。

グループステージ突破はもはや夢物語ではない

 シェリフ社はおよそ200億円でFCシェリフの本拠地を作りました。1万3500人収容と適度なサイズですが、中身は最先端。インドアピッチやホテル、体育館もあり、モナコを連想させます。CLグループステージのシャフタール戦は5200人の地元サポーターが競技場を埋めていました。ただ、普段のリーグ戦は平均150人、ビッグマッチでもせいぜい500人と中央アジアのレベルです。モルドバ出身の選手は基本的にリーグ戦にしか出番はなく、CLでは南米勢、アフリカ勢、他の欧州勢が中心となります。

 そのうちのひとりで、レアル戦で素晴らしいハーフボレーを決めたルクセンブルク代表の旅人、セバスチャン・ティルはフランスのメディアの取材にこう答えました。

「CL予選で、レッドスター・ベオグラード(セルビア)やディナモ・ザグレブ(クロアチア)に勝って、チームは波に乗っています。競技場や練習場、スタッフなどの環境は、東欧の名門クラブに引けを取らない。チーム内の雰囲気もいいんです!」

 10月と11月、FCシェリフはアウェーとホームでセリエAの名門インテルと対決します。すでに2勝を挙げているFCシェリフは、この試合の結果次第でCLグループステージ突破の可能性が広がります。もう夢ではありません。

 そんななか、ホームゲームで地元のファンが盛り上がり、ソ連と同じ紋章(鎌と槌と星)を誇る国旗をスタンドで披露したら、国際社会はどう反応するのでしょうか。スタジアムの近くにはレーニン像もまだ堂々と立っています。ただ、この“ゴーストカントリー”からやってきたFCシェリフの選手たちは難しくは考えないでしょう。勝利に集中するのみです。

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