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〈退団〉成績不振、SNS騒動…噛み合わなかったバレンティンとホークス 「退団試合」に思う“一抹の寂しさ” 

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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posted2021/10/07 11:04

〈退団〉成績不振、SNS騒動…噛み合わなかったバレンティンとホークス 「退団試合」に思う“一抹の寂しさ”<Number Web> photograph by KYODO

9月30日の「退団試合」後、ファンに手を振るバレンティン。10月5日、球団はウェーバー公示を申請した

今季、通算300号本塁打を達成した次の試合で……

 寂しさといえば、思い返すことがある。今年の交流戦最終戦だった6月13日の古巣のスワローズ戦で、バレンティンは外国人選手として史上4人目となる通算300号本塁打を達成した。それは同時に通算1000本安打となるまさにメモリアルな一発だった。

「両記録寸前で時間はかかってしまったが、今まで積み重ねてきた数字なので素直にうれしいよ。一振りで1000安打、300号と同時に決めることが出来たし、古巣ヤクルトの前で決められたことも良かった。これからもチームの勝ちにつながる1本を打ち続けて貢献していきたいと思う」

 同日の喜びのコメントだ。さらにこの試合では、7回に2打席連続となる通算301号も放っていた。その次戦はリーグ戦再開初戦となるため、少し間が空き迎えた6月18日のファイターズ戦。しかし、バレンティンの名前はこの日のスタメンになかった。

 もちろんチーム首脳陣が考え抜いた末のオーダーだ。前の試合で打てば、必ず使ってもらえる保証はない。だけど、あの日の試合前練習のバレンティンはどこか寂しそうだった。気持ちもどこか切れていたようにすら見えた。

11度目の零封負けを喫した日、帰国の連絡が届いた

 その後、バレンティンはファームに落ちた。明るい人間性でチーム内からの悪評はほとんど聞くことはなく、ファーム取材をしていても「結構マジメ」というのが実は率直な印象なのだが、ある日、打席に立つバレンティンに向けて三塁コーチャーから怒号が飛んだこともあった。サイン確認を怠ったためだった。

 もうバレンティンは日本にいない。10月3日の18時過ぎ、現状では支配下登録に名前を残したまま(5日に球団はウェーバー公示を申請)、帰国を知らせるメディア向け連絡が球団から届いた。この約2時間半前、一軍はバファローズに敗れた。中4日でエース千賀滉大を投入したが実らなかった。

 奇跡の逆転優勝はおろか、CS進出すら危ぶまれる状況の中で受け取った1通のメール。打線はこの日で今季11度目の零封負け(その他に0-0の引き分けが1試合)を喫した。こんな秋を迎えるしか、他に手立てはなかったのだろうか。なんだか無性に虚しくなった。

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