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〈退団〉成績不振、SNS騒動…噛み合わなかったバレンティンとホークス 「退団試合」に思う“一抹の寂しさ”
posted2021/10/07 11:04
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
KYODO
劇的な“サヨナラ”ホームラン……ではあった。
9月30日、ウラディミール・バレンティンが今季ウエスタン・リーグ最終戦の最終打席で左越えの特大アーチを放った。
3-3で迎えた8回裏先頭で立った打席。ドラゴンズの5番手投手・マルクの代わり端の甘い146キロ直球を完ぺきにとらえた。打った瞬間に確信し、丸太のような両腕を突き上げてガッツポーズ。味方ベンチにも「やったぞ」とポーズを決めてから悠然と走り出した。
温かな拍手に包まれる中、バレンティンは気持ちよさそうにダイヤモンドを一周。ベンチにいたチームメイトたちも喜色満面で大興奮し、喜びを分かち合う様子はお祭り騒ぎの様相だった。結果的にこれが決勝点となり、ホークス二軍は4-3で勝利。バレンティンは終始ご機嫌で、試合終了後には若手野手陣と記念撮影をする一幕もあった。
輝けなかったホークス時代。「SNS騒動」で揺れた
タマスタ筑後に詰めかけた鷹ファンたちもこれが「見納め」だと知っていた。
「Me know sept 30 its closer」(原文ママ)
9月25日、自身のSNSでこのウエスタン最終戦の9月30日がラストゲームになることを示唆する投稿をしていた。
そして、29日朝には報道各社が「バレンティン今季限り」「バレンティン退団へ」などと書き立てたことで、これがホークスの一員としてプレーする最後の試合だということは周知の事実となっていた。
だが、あえて非礼を承知で言えば、そんなことは随分前から容易に想像できたことだ。2013年に日本新のシーズン60発を放つなど、スワローズ時代の9年間で288発を放った。そうした華々しい実績を引っ提げて、昨シーズンからホークスと年俸5億円プラス出来高払い(金額は推定)の2年契約を結んだ。
ただ、バレンティンは初めから期待外れなわけではなかった。世界中が感染症の恐怖に怯え始めていた頃の20年春のオープン戦は、10試合で打率.350、2本塁打、10打点、出塁率.464とシーズン到来を楽しみにさせる活躍を見せていた。しかし、開幕は延期に。ようやく6月に開幕を迎えた頃にはどこか歯車が狂ってしまっていた。
結局、1年目は60試合出場で打率.168、9本塁打、22打点に終わり、今季も22試合の出場で打率.182、4本塁打、9打点とサッパリの成績しか残せなかった。