野球のぼせもんBACK NUMBER
〈退団〉成績不振、SNS騒動…噛み合わなかったバレンティンとホークス 「退団試合」に思う“一抹の寂しさ”
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/10/07 11:04
9月30日の「退団試合」後、ファンに手を振るバレンティン。10月5日、球団はウェーバー公示を申請した
ホークスは選手層がとにかく厚い。しかも昨季はバレンティン抜きでもリーグ優勝と4年連続日本一を成し遂げた。だからバレンティンが戦いの輪の中に不在だとしても、ファンがそれほど大きく騒ぎ立てることはなかった。
一方で、前述したような彼が時折発信するSNSには、しばしば周囲が振り回された。昨年9月29日の夜には「幸せはお金では買えない」と英語で書き込んだ。後日、本人は「野球とは関係のないこと」と釈明。離れて暮らす家族と会えない寂しさなどから出た言葉だったようだが、スワローズ時代のユニフォーム姿の写真を添えていたことであらゆる誤解を招いた。不信感を募らせたファンも多かったようでネット記事のコメント欄などがかなり荒れた。
擁護できない部分はあまりに多い。それでも……
今シーズン中も、5月にはツイッターに英文で「時間を巻き戻せたら、もっといい決断をする」と記したり、8月にも「日本での最後のシーズンになる時が来ました。神宮で、すべてのファンに向けてメモリアルゲームができることを望みます」との呟きをアップしたりした。
そのたびに非難の声が上がった。確かに軽率な言動であり、擁護しがたい行為と言わざるを得ない。今夏には深夜に突然、PayPayドームを訪れたいと球団関係者に連絡を入れ、荷物整理を行っていたという話も伝わってきている。そして、先日の「退団試合」だ。
二軍の公式戦はこの日で終了したが、肝心の一軍ペナントレースは佳境だ。ホークスとしては1つでも上位を目指し、そしてリーグ連覇の可能性がある限りは望みを捨てずに、最後の力を振り絞って戦っている。その中でただ一人、今シーズンの戦いを終えてしまった。
もちろん、これはバレンティンの独断ではなく球団と話し合いを行った上で、球団側も了承した形で行われた「ラストゲーム」だった。
だがしかし、世間の非難の声はバレンティンにとにかく集中した。先述したように、バレンティンの振舞いについて擁護できない部分はあまりに多すぎる。
けれども……。バレンティンだけに100%の、すべての非があるのか。ネットユーザーによる声があまりに大きく、そこには少し違和感を覚える。
球団ないしは首脳陣には、選手が働きやすい環境を整える責務がある。バレンティンに対し、本当にベストなアプローチが出来ていたのだろうか。昨年の内川聖一に続いて「退団試合」が行われたことが、ふと寂しく感じた。