9月上旬。市和歌山の小園の取材に訪れた際に、最後に甲子園の話題になった。その時、小園は「やっぱり……甲子園でも大仲君が一番いいバッターだと思いました」と、ポツリと話した。

　小園は、大仲のどこに良さを感じるのか。

「際どいコースも含めて自分のボールはどちらかと言うと見てくるバッターが多いのですが、大仲君は全て振ってくるし、バットの先でも引っ張れる。ファウルにして粘って、引っ張ってヒットにして……。外もしっかり対応してきます。先頭打者ならまだしも、得点圏の大仲君は本当に危険だと思っていました。

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　智弁和歌山の打者は、このコースに投げていたらだいたい打たれないというイメージはあったのですが、大仲君は全く浮かばなかったんです。それくらい、しぶとい打者でした」

　17打数10安打。打率は.588。優勝した夏の甲子園ではチームトップの打率を残した。

　小園の言う通り、しぶとさ、巧さを兼ね備え、21年ぶりの全国優勝に貢献した。何があっても明るく前向きに白球を追った大仲を、野球の神様はずっと見ていたのかもしれない。

　将来の夢は消防士。今は大学進学のために日々勉強に明け暮れている。

「最後にしんどいことはありましたが、頑張ればいいことがあるんやなと思いました」

　高校生の今世代を代表する本格派右腕を唸らせた小さな強打者は、元気いっぱいに駆け抜けた夏の余韻を噛みしめながら、次の夢へと向かっている。

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