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《全国制覇》智弁和歌山「マウンドに集まるの、やめないか?」中谷監督が甲子園の前に選手へ伝えていたこと

posted2021/08/29 17:15

 
《全国制覇》智弁和歌山「マウンドに集まるの、やめないか?」中谷監督が甲子園の前に選手へ伝えていたこと<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

和歌山大会決勝でも、マウンドに集合しなかった智弁和歌山ナイン

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph by

Sankei Shimbun

“智弁対決”の決勝戦を制し、21年ぶり3度目となる夏の甲子園の頂点に立った智弁和歌山高校。和歌山大会の勝ち上がりと甲子園での戦い方を描いた記事を再公開します。好投手・小園健太(市和歌山・3年)を攻略して夢の舞台にたどり着いたチームに中谷仁監督が伝えていたのは「相手を尊敬する気持ち」でした。(初公開:2021年8月8日配信)

 甲子園切符をかけた今夏の和歌山頂上決戦は、プロもうなるハイレベルな駆け引きの連続だった。

 5回を終えた時点で0-0。その陰には、市和歌山の小園健太-松川虎生というプロ注目のバッテリーと、智弁和歌山打線の息詰まる攻防があった。

 視察していたNPBのあるスカウトはこう語った。

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「小園君、松川君のバッテリーは、1球たりとも失投は許されないと考えて、本当に丁寧に投げている。智弁和歌山打線は、初球からどんどん仕掛けに行っている。小園君のようなピッチャーに対して最初から仕掛けるんですから、すごいですよね。それをバッテリーも察知していて、初球からいろんなボールを使っている。

 今までの試合ではおそらく(初球は)まっすぐとスライダーが多かったと思いますが、今日は初球からスライダー、カットボール、チェンジアップなどをまんべんなく使っている。さすがですよ。両チームとも本当にレベルが高い。感心しながら見ています」

 駆け引きは試合前から始まっていた。

先発はエース中西ではなく伊藤

「伊藤や」

 智弁和歌山の先発メンバーを見た市和歌山ベンチは面食らった。先発はエース中西聖輝だと予想していたが、背番号18・伊藤大稀の名前があった。

 中西は2日前の準決勝で投げていなかったこともあり、決勝の先発は中西だと誰もが予想した。中西自身も行く気満々だった。

 決勝の前日、智弁和歌山の中谷仁監督は、投手陣を乗せてドライブに行った。そこで切り出した。

「どうする? 明日」

 中西が、「僕が全部行きます!」と間髪入れず答える。エースの意気込みは嬉しかったが、中谷監督は別のプランを提案した。

「『オレな、実はこういうプランを考えてんねんけど、どお?』と聞いたら、『監督が言うんやったら、それで行きましょう』と、彼らもそっちに乗ってくれたので、『じゃあ信じて行ってくれるか』と。『伊藤に何かあったら全員でカバーしようや』という話をして、『よっしゃ』と覚悟が決まった感じでした」

 140キロ台前半のストレートがあり、制球もいい伊藤は、抜擢に応え、今夏好調だった市和歌山打線を6回まで0に抑えた。

 一方で、150キロを超えるストレートと多彩な変化球を操り、投球術にも長ける小園攻略については、中谷監督は細かい指示は出さなかったという。

【次ページ】 「任せるわ」と伝えた理由

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