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《男子バレー》“苦労人”福山汰一(27)が名乗りを上げるミドルブロッカー争い…急成長の転機となった「ステップ」とは?
posted2021/09/17 11:02
text by
岩本勝暁Katsuaki Iwamoto
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
爪を隠す鷹といったところか。どこか飄々として、つかみどころがない。点を取ったあとのガッツポーズも控えめで、よく言えばマイペース。それがバレーボール男子アジア選手権で日本代表デビューを果たした福山汰一(ジェイテクトSTINGS)の格別なイメージだ。
最初の出場は予選グループリーグ戦(カタール戦)の第3セット終盤、セッターの藤井直伸(東レアローズ)に代わってワンポイントブロッカーとして入った。本格的な出場は、翌日のバーレーン戦。スターティングラインナップに名を連ねると、第3セットの途中までコートに立ち続けた。ブロックとサーブで1点ずつ、トータルで4点を稼いでいる。
試合後のリモート会見では感慨に浸ることもなく、「出だしがよくなかった分、ずるずるといってしまった」と淡々と語った。
だが、これまでの福山を考えれば、決して小さくない一歩だった。何しろ、ジェイテクトに加入してからは苦労人の印象が強い。
飛躍のきっかけを掴んだブロック
1年目の2016/17 Vプレミアリーグは開幕戦こそスタメン出場を果たしたものの、早い段階でベンチを温める時間が増えた。鎮西高、早稲田大と自主性を重んじる指導に身を置いてきただけに、「こうしなさい、ああしなさい」と型にハメられたプロの世界に窮屈さを感じることもあっただろう。しかも193センチの身長は、ミドルブロッカーとしては小兵の部類に入る。
ブロックよりもクイックなどの攻撃を期待されての起用が多く、シーズンが進むにつれてパフォーマンスが落ちていく悪癖もあった。
飛躍のきっかけは、昨シーズンのVリーグだ。ジェイテクトのフェデリコ・ファジャーニコーチ(現在は監督)から教わったブロックが、ようやく実戦で機能するようになった。
「ブロックのステップや手の出し方について取り組んできました。高さがない分、1本でも多くタッチを取りたい」
こう口にする機会も増え、オポジットの西田有志(現ヴィボ・ヴァレンツィア)とブロックの個人ランキングで上位を争った。結果的に小野寺太志(JTサンダーズ広島)の後塵を拝したが、数多のミドルブロッカーを押しのけてセット平均0.63点で2位に入っている(小野寺は0.65点)。