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田中碧とアペルカンプ真大は“宇佐美貴史&原口元気の再来”になれるか〈昇格を目指すデュッセルドルフ“日本コンビ”再び〉
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/08/31 11:05
東京五輪を経てドイツの舞台で戦う田中碧。アペルカンプ真大とともに1部昇格を狙う
「理性的なボールを蹴れよ!」
かつて浦和レッズも指揮したフォルカー・フィンケが、90年代に確立したサッカー哲学を現在も踏襲しているフライブルクというクラブの特徴は?
マイボールを大事にしながら、ビルドアップから丁寧にボールを動かしていく。相手との駆け引きで優位に立ち、ショートパスコンビネーションとダイナミックな展開をうまく使い分け、攻守にチーム全体が連動して関わり続ける。
キール戦後、プロイサー監督は「ロングボールに頼るのではなく、自分たちでボールを動かして攻撃を組み立てていこうとしているところはよかった」と振り返ったが、そこが今季のデュッセルドルフにとって大事なベースとなるはずだ。
ただ、いきなりボールをつなげるようになるかというと、そう簡単ではない。DFからのビルドアップがおぼつかずにミスパスを繰り返したり、うまく前線にボールを運びながらクロスボールが味方に合わず通り過ぎたりする場面もちらほら。
近くに座っていた年配のファンの叫び声が聞こえてきた。
「理性的なボールを蹴れよ!」
ドイツでは、盲目的で狙いが曖昧なパスや、適当に蹴られたボールに対して、そうした表現を使うことがある。
そんな不安定なゲーム運びを見せたデュッセルドルフにあって、“理性的なプレー”でチームを引っ張っているのがアペルカンプ真大だ。昨季に大きく成長し、U21欧州選手権決勝トーナメントのメンバーにも選ばれた。7月下旬には契約を26年まで延長している。
スポーツディレクターのウーベ・クラインは「シンタがどれだけ素晴らしい成長をしているかは誰もが知っているはずだ。シンタはフォルトゥナのロゴを身にまとうアカデミー選手にとってのお手本だ。トップチーム昇格後短い時間でファンのハートをつかんでいる」とコメントしている。
クラブの将来を担う存在として
アペルカンプは今季、選手代表にも選出されている。アダム・ボジェック、ルーベン・ヘニングス、アンドレ・ホフマン、マルセル・ソボッタというベテラン選手に交じって、生え抜き選手として、クラブの将来を担う存在として、期待をかけられている。
「若手選手にも発言権があるというふうにしたいのだ。シンタとともに選手代表は新しい顔を持つことになる」(プロイサー監督)