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中田翔「無期限出場停止」が《9日で解除》の説明なし…「球界の番人」コミッショナーは何をしているのか?<ファンのモヤモヤが…>
posted2021/08/29 11:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
日本ハムでチームメイトへの暴力事件を起こして無期限出場停止処分を受けた中田翔内野手が、処分からわずか9日後に巨人に移籍し試合出場したことへの野球ファンのモヤモヤは、まだしばらく晴れそうにない。
無期限の出場停止処分の解除を前提にトレードに応じ、移籍してすぐに試合に出場させた巨人は“共同共謀正犯”という声も聞くが、やはり問題の本質は処分撤回を前提にトレードを持ちかけた日本ハムの無責任さにあるのは明確だ。しかもこれだけの問題を起こしたにもかかわらず、日本ハムとして中田本人も球団としても一切、会見を行っていないことにファンからも失望の声が起こっている。
「なんで北海道でファンにお話くださらなかった?」
8月27日に地元北海道のHBCラジオの番組に日本ハムの岩本賢一チーム統括本部副本部長が出演。パーソナリティーから「なんで北海道で(中田が)暴力問題を起こしたこととか、移籍のこととかファンにお話くださらなかった?」と問われ、「北海道で謝罪したくない、中田がコメントを出したくない、ファイターズが北海道で何かをしたくなかったということではなかったのですが、先方球団との話し合いの中で東京で、ジャイアンツの一員として入団会見するときに一緒に謝罪をという話になりました」と回答していたという報道があった。
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この発言も一連の対応が日本ハム側からの要請であったにもかかわらず、あたかも「巨人の意向でそうなった」と言っているもので、処分を行った当事者としての責任意識とファンに対する誠実さの欠如を物語るものと言わざるを得なかった。
もちろん日本ハムと巨人にはこの間にルール的な問題はない。多くの人々が抱くモヤモヤ感は、ある意味、感情的、情緒的なものであり、立場や考え方でまた別の意見があることも理解しなければならないのかもしれない。
ただ、ファンの球界に対する失望感は強く、その回復のために野球界がもう一度、改めて考えなければならない制度的な問題もクローズアップされていることも、この一連の出来事の重要な部分である。