流れが変わったのは中田がさっそく試合に出場してから。代打で登場し（21日）、翌日にはホームランを放つ（22日）。

　この日は長嶋茂雄氏が観戦に訪れており、『長嶋大興奮　真の強打者』（報知23日）、『中田弾　長嶋さん直ゲキ！！事件判明11日後』（日刊スポーツ23日）といつのまにかお祭りムード。

「試合前に長嶋さんに激励される中田翔」という写真も大きく報じられた。これは長嶋茂雄の政治利用ではないか？　そんなことを感じてしまうほど巨人のお膳立てが巧みだった。

22日の本塁打後、守備につく際ファンに向かって一礼する中田。長嶋さんも大喜びだった　©JIJI PRESS

すべての写真を見る（2枚）

　ただ、報知の名物コラム『仙ペン』（仙道学編集委員）は、

《試合前の長嶋さんへのあいさつ。背番号の件に続き、これでまた逃げ道が閉ざされた》と指摘（23日）。

　阿部慎之助の「10」を背負ったことや長嶋さんの激励を受けたことで実は中田は追い込まれ《毎日が選手生命の徳俵。永遠の首一枚》状態ではないかという見立て。その2日前のコラムでは《言われているような「温情トレード」ではないはず。原辰徳という人は救いの手を差し伸べても無条件で助けるようなことはしない。怖いんだから。》（21日）と書いていた。

タブロイド、夕刊紙はご立腹

　長嶋さんが喜んでスポーツ紙は美談調になったが、こういうときは意地悪なタブロイド紙・夕刊紙を覗いてみよう。

『中田翔コネ入団全内幕』（日刊ゲンダイ8月23日付）

『暴力で出場停止処分食らった中田が平気な顔で移籍後初本塁打のおかしさ』（日刊ゲンダイ8月24日付）

『G移籍後　中田の即出場に渦巻く賛否』（夕刊フジ8月24日付）

　やはりご立腹の様子。巨人はただ中田を「戦力」として欲しかっただけでは？　日ハムは厄介払いをしたかっただけでは？　ちゃんと手順を踏んでけじめをつけていたらここまで言われない、という論調だった。これは意地悪というより正論ではないだろうか。

　ちなみに東スポも「衝撃　中田移籍」（8月22日付）という記事で「たった9日で！！謹慎解除　無期限じゃないのか」「トレードでチャラ　許されるのか！！」とゲンダイ・フジと同様の論調。裏一面では『清原救済あるのか』。これがアリなら清原の巨人復帰だって100％ないとは言えなくなった、と東スポは独自の展開に飛んでいた。

　では「一般紙」ではどう報じられたか。

【次ページ】　理想の復帰ストーリーを妄想してみた