「センバツと同じになってしまう」

　3点リードの9回。森下がマウンドへ。「今大会ナンバーワン左腕」の称号まで、残りアウト3つ。しかし、甲子園で勝つのは簡単ではない。

　1死二、三塁のピンチを招く。二松学舎の7番・桜井虎太郎が右打席に入る。1ボール1ストライクからの3球目。内角を狙ったカットボールが外角高めに抜け、左翼スタンドに運ばれた。森下の頭に悪夢がよぎった。

#二松学舎大付 × #京都国際
9回裏 二松学舎大付、7番・桜井が土壇場で同点3ランホームラン！！
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— バーチャル高校野球 (@asahi_koshien) August 24, 2021

「センバツと同じになってしまう」

　今春のセンバツ2回戦。森下は2点リードの9回に3点を奪われて、東京代表の東海大菅生にサヨナラで敗れた。追い込みながら、右打者に外寄りの直球を右翼線へ運ばれた。

「ここでもう一度立て直すのがエース」

　センバツの敗戦を忘れたことはない。再び東京代表にサヨナラ負けを喫するわけにはいかない。森下は汗をぬぐって気持ちを入れ直す。

「春は打者の内角を攻められずに負けてしまい、ピンチでも内角に投げ込める練習をたくさんしてきました。精神的に強くなったと思います」

　同点3ランは右打者の内角を狙って、コントロールミスしたものだった。しかし、逃げるつもりはない。後続の打者にも怯まず内角を攻めて打ち取り、延長戦に持ち込んだ。

絶対に取り返して勝利する

　そして、直後の攻撃。森下が2死一塁で打席に入った。投球への負担を考慮して6番を打つが、小牧監督からは「クリーンアップを任せられる打力がある」と評価されている。

「自分が取られた点だったので、絶対に取り返して勝利する気持ちで振り抜きました」

決勝打となった森下のタイムリー三塁打©JIJI PRESS

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　秋山の直球を左翼のライン際に運ぶ。クッションボールが左中間方向へ大きく跳ね返る間に、森下は三塁へ。さらに、二松学舎の中継が乱れて、一気にホームへ還った。

　森下が10回のマウンドへ向かう。ゆっくりと屈伸をして呼吸を整える。球数は136球に達していた。疲労は隠せない。それでも、貫くべきことがある。

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