甲子園の風BACK NUMBER
「センバツの悪夢を夏に再現」寸前も…自らHRと決勝打 、京都国際・森下が“打たれ強さがある大会No.1左腕”になれたワケ
posted2021/08/25 06:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Kyodo News
悪夢を払しょくして、延長10回の接戦を制した。
エースとして最後までマウンドを守り、打席では本塁打も決勝打も放った。だが、京都国際・森下瑠大の心を占めたのは喜びではなく安堵。試合後の言葉も反省が多かった。
「立ち上がりに点を取られてチームの雰囲気を悪くしてしまいました。9回もセンバツと同じように点を取られてしまい、最初と最後に甘さが出てしまったと思います」
3回戦の相手は、東東京代表の二松学舎大付。背番号1の秋山正雲は初戦となった2回戦の西日本短大付戦で完封している。一方、京都国際の森下も、1-0で勝利した初戦の前橋育英戦を最後まで投げ抜いた。プロも注目する左腕・秋山とのエース対決。森下は小牧憲継監督から「どっちが今大会ナンバーワン左腕か証明してこい」と送り出された。
投手戦が予想され、先制点が重みを増す。初回、二松学舎の秋山は2つの三振を奪い、3者凡退に斬った。一方、京都国際の森下は、先頭打者にいきなり二塁打を許す。連続三振で2アウトを奪ったものの、4番に先制打を浴びた。
自らのバットで振り出しに戻した
森下は2回以降、リズムよく投球してスコアボードにゼロを並べる。
1点を追う5回、先頭で打席に入ると、秋山が投じた外角の直球を捉える。打球は左翼のポール際へ。甲子園の浜風に乗って、スタンドに飛び込んだ。自らのバットで試合を振り出しに戻した。
続く、6回。森下は強力な援護を受ける。
「中盤、終盤で必ず球威が落ちてくる。秋山君はきれいな球筋だから、タイミングとポイントを合わせれば、自然と打球は飛んでいく」
小牧監督の指示を選手が体現した。1死一塁から3番・中川勇斗が左中間へ勝ち越し2ラン。続く4番・辻井心も左翼ポール際へ本塁打。ともに、狙っていた秋山のスピンの利いた直球を弾き返した。ピンチに強い秋山を本塁打攻勢で沈めた。