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ついに日本人がNCAAの決勝まで――。
バスケット選手・八村塁の可能性。
posted2017/04/05 17:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
「やっぱり八村塁は持っている」
3月に入って、八村塁が所属するゴンザガ大(アメリカ・ワシントン州)がNCAAトーナメント(全米大学選手権)で快進撃をし始めると、日本各地のファンや関係者の中から、そんな声が聞こえてきた。
去年、強豪ゴンザガ大に入学し、秋から1年目のシーズンを送っている八村は、知られている中では、日本国籍を持つ男子選手としては史上5人目の「NCAAディビジョンI」バスケットボール選手だ。これまでの4人、高橋マイケル(カリフォルニア州立大ノースリッジ校卒)、松井啓十郎(コロンビア大卒)、伊藤大司(ポートランド大卒)、そして渡邊雄太(ジョージワシントン大・現3年)も皆、NCAAトーナメント出場を目標にしながら、誰も達成できていなかった。
それが、八村は1年目からNCAAトーナメントに出る機会に恵まれたのだ。
しかも、ただ単にトーナメントに出るだけでなく、ゴンザガ大は次々に勝ち進み、全米王者を決める決勝にまで駒を進めた。
決勝では古豪ノースカロライナ大に71-65で敗れたが、それでも全米準優勝。それまで“エリート8(8強)”までしか進んだことがなかったゴンザガ大にとっても、歴史的なシーズンだった。
八村は「持っている」のか「持っていない」のか?
そんなチームに、1年前の春に日本の高校を卒業して、英語もほとんど話せないままにアメリカに渡った八村がいたのだ。
渡米1年目でNBA選手でも経験した者が少ない全米決勝の雰囲気を当事者として味わったのだから、確かに「持っている」のかもしれない。
もっとも、本人は「僕は持ってるとは全然思わないんですけど」と言う。
よく考えると、「持っている」という表現には、本人の実力や努力以上に運が強いという意味合いが含まれる。それが嫌なのかと思いきや、「そういうのは全然気にしていないです」と言う。こちらが勝手に型にはめようとすると、そこからするりと抜けていく。