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《追悼》19歳の見習い記者に「一緒にプレーしていいですか?」ゲルト・ミュラーの“記憶と記録に残る”ゴール感覚と謙虚な人柄
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/08/24 17:04
75年の生涯に幕を下ろしたゲルト・ミュラー。数々の記録を作ったストライカーは、謙虚な人柄でも多くの人に愛された
19歳の記者見習いにも謙虚な対応
選手としてだけでなく、人柄も素晴らしかった。
どれだけゴールを決めても、どれだけタイトルを獲得しても、ゲルト・ミュラーという人物は常に謙虚で、地に足をつけて、人を大切にする。偉ぶったりすることがなかった。『ビルト』紙のフリッツ・ハウシュ記者が寄稿していた思い出話が印象的だ。
「スポーツジャーナリストが集まって、ミニサッカーをしようということがあったんだ。当時、私はまだ19歳の研修生。更衣室で靴紐を結んでいたら、ドアが開いて、1人の人が訪ねてきた。『私も一緒にプレーしていいですか?』って。自分の目が信じられなかった。そこに立っていたのは、あのゲルト・ミュラーだったんだよ。その前の年の欧州選手権で西ドイツを優勝に導いた選手が。そんな彼がアマチュアのちょっとしたサッカーで、19歳の私に『一緒にプレーしてもいいですか?』と、丁寧に、謙虚に尋ねてくれたんだ」
ミュラーにとってサッカーができる場所は、どこだって輝かしい場所だったのだろう。
「彼の名前は永遠に残るだろう」(ペレ)
そんなミュラーの死を受け、世界中のサッカー関係者が悲しみに暮れている。バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッドら数多くのクラブが追悼のコメントを出し、数多くの選手がメッセージを送っている。
「ひとりのサッカーレジェンドが僕達の元から去っていった」(リオネル・メッシ)
「あなたの伝説的なパフォーマンスは僕らサッカー選手にとって永遠のチャレンジとして残る」(ロベルト・レバンドフスキ)
「若いころ、FWコーチのあなたから多くのことを学ぶことができた。センセーショナルに素晴らしい人間だった」(トーマス・ミュラー)
「子どものころに彼のプレーをよく見ていて、沢山のことを学んだ。ペナルティエリア内のベストFWだ」(ゲーリー・リネカー)
「サッカーを愛するすべての人にとって、悲しい日となった。ゲルトのようなスターが、この世を去ってしまうなんて。ミュラーはドイツサッカーをひとつ上の段階へと上げた史上最高のFWのひとりで、素晴らしい人間だった。彼の名前は永遠に残るだろう」(ペレ)