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ベルギーの大砲がクラブ史上最高額の146億円でチェルシーに帰還 10年前の「ネクスト・ドログバ」から「元祖ルカク」への期待
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/08/22 17:01
世界最高峰のストライカーに成長を遂げたルカクが満を持してチェルシーに復帰。新たなエースとして期待される
トゥヘルのチェルシーは、相手もラインを上げて攻めにくる強豪対決で一気に裏を狙う攻撃を躊躇わない。1-0で勝利したCL決勝を含む昨季のマンチェスター・シティ戦が、その一例だ。
縦1本の主な供給源はロングボールの精度が高いジョルジーニョと、キラーパスを放つセンスを兼ね備えるマウントだが、マウントをインサイドハーフとして起用すれば両MFは3-5-2でもスタメンに名を連ねることが可能。後方からのパスに反応するベルナーは、相手DF陣の意識と足が相棒のルカクにも向くことから、チャンスをものに出来る可能性が高まると予想できる。
ベルナーの本領発揮という相乗効果を伴うことになれば、ルカクの再加入に盛り上がり切れないファンの心境も変わる。1800万ポンド(約27億円)だった1回目の移籍金の5倍以上で買い戻すはめになった新戦力ではなく、過去最高額を支払う価値のある効果抜群の即戦力獲得として今夏の補強を受け止められるはずだ。
前回はロッカールームでドログバの隣に座っただけ
いわゆる「大物」として買い戻されたルカクにはチーム内最高のサラリーも支払われる。昨季までの最高給取りはエンゴロ・カンテ。前回に当たる2016-17シーズンのプレミア優勝も、通算2度目の昨季CL優勝も、小柄だが存在感抜群のボランチの活躍なくしてはあり得なかった。ルカクにも同様のインパクトが求められるが、あらゆる面でクオリティを高めている男は、チェルシーを本格的な優勝争いの参戦者へ進化させられるだけの能力を持つ。
ルカクは、2度目の入団会見でチェルシー帰還の夢が叶った心境を訊かれると、露骨に嬉しそうだった1度目の移籍当時とは違い、「現実になったのだから、その現実の世界で力を証明しなきゃならない」と冷静な表情で返答していた。
心中には、メディアで指摘される「やり残した仕事がある」気持ちもあることだろう。まだ若く、不遇だったとも言えるチェルシーでの前回は、ロッカールームでディディエ・ドログバの隣に座っただけの「ネクスト・ドログバ」に終わってしまった。
あれから10年。今でも交流があるという“初代”も「認めて喜んでくれている」という成長を遂げたストライカーが、そのドログバの全盛期ばりに頼れるチェルシーの主砲、「元祖ルカク」としての姿を披露すべきときが来た。