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「もし自分がオリンピックに出られていたら…」篠山竜青が“代表落選”をポジティブに語る理由…中村憲剛の助言が支えに

posted2021/08/20 17:02

 
「もし自分がオリンピックに出られていたら…」篠山竜青が“代表落選”をポジティブに語る理由…中村憲剛の助言が支えに<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

コートの内外で存在感を発揮してきた篠山竜青。東京五輪への出場は叶わなかったが、すでに次なる目標へと動き始めている

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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Takuya Sugiyama

本大会直前で代表メンバー入りを逃し、失意の底にあった男を奮い立たせたのは、他ならぬその“悔しさ”だった。川崎ブレイブサンダース所属、篠山竜青は今年で33歳。東京オリンピックに出られなかったからこそ、彼には新たな“夢”ができた――。(全2回の2回目。#1はこちら)

 東京オリンピックには出られないんだ……。

 自宅での自主隔離期間が終わってからも、篠山竜青の心は空っぽだった。ある日、車で買い物へ行くことになった。もちろん道路にいるときは細心の注意を払っていたが、駐車場で誰もいないことを確認したあと、ペーパードライバーであっても難なく駐車できるようなスペースで、車の側面を壁にこすってしまった。

「どんだけ放心状態なんだよ……」

中村憲剛からのアドバイス「オレも味わったから…」

 尊敬する先輩から貴重なアドバイスを授かったのは、そんなタイミングだった。競技こそ違うものの、同じように川崎をホームタウンとして戦ってきたレジェンドで、前年にJリーグ王者川崎フロンターレでキャリアに幕を下ろした中村憲剛と話をすることができた。

 中村は2014年に行なわれたサッカーのブラジルW杯のメンバーから落選して、胸を痛めた経験があった。だから、篠山のツラさに共感してくれたし、そこから先にやってくるであろう、心を乱されるタイミングや出来事についても忠告してくれた。

「この先、オリンピックの開会式が始まれば悔しさを覚えるだろうし、日本代表が初戦を戦うときにも、きっと悔しいと思うはず。メンバーに入れないときには、色々な場面で、何とも言えない気持ちがこみあげてくるものなんだ。それはオレも味わったから。

 でも、自分のチームに戻ってボールを蹴ったら、驚くほどサッカーに集中できている自分もいたんだよね。だから、早くチームの練習が始まって、ボールにたくさん触れられる日が来るといいね」

 篠山は中村の存在の大きさをかみしめる。

「すごく、励まされました。本当に、励まされました。改めて、この人に出会えて本当に良かったと思いましたから」

落選後、すぐにTV解説を引き受けた理由

 そして篠山はこの時期に、常識には当てはまらない行動に出た。

 TVをはじめとした解説の仕事を引き受けたのだ。代表落選を告げられたのが6月19日のこと。1カ月もたたない7月7日のハンガリーとの強化試合では、テレビ朝日の中継でスタジオゲストとして出演した。引退後に備えた“転職活動”などと勘ぐられそうだが、そうではない。その裏には、2つの信念があった。

【次ページ】 画面越しに、代表の試合を目に焼き付けた

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