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破産3回のベネツィアが19年ぶりにセリエA復帰 苦難のシーズンの予兆も“大物会長”は残留決定で運河へのダイブを公約
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/08/18 11:02
3度の破産を乗り越え、19年ぶりにセリエAに復帰したベネツィア。世界屈指の観光都市が再びサッカーの熱に包まれる
コッパイタリア1回戦ではPK戦の末に勝利
19年ぶりのセリエAにチームの準備は進む。
左右のサイドバックに補強したダビド・シュネグやティロネ・エブエヒはまだ無名でも、中盤底のレジスタに獲得したイスラエル代表MFドル・ペレツ(前マッカビ・テルアビブ)は掘り出し物かもしれない。
また、アイスランドやアメリカといったサッカー辺境国出身の外国人新戦力を獲得する一方、経験不足が懸念される最終ラインには、ミランから元イタリア代表DFマッティア・カルダーラをレンタル補強した。
4-3-3の3トップには昨季、昇格を手繰り寄せたイタリア人トリオがそのまま残る。特に9番を背負うフランチェスコ・フォルテは、7月末からのオランダ遠征でユトレヒトとトゥベンテ相手に連続得点をあげ、連勝に導く好調ぶりを見せた。
8月15日、ベネツィアは今季初の公式戦となったコッパイタリア1回戦でフロジノーネと対戦した。延長戦終了時点で1-1と決着がつかず、8人ずつが蹴りあったPK戦の末に勝ち上がった。
苦難のシーズンを予兆しているようだが、62歳のダンカン・ニーデラウアー会長は鼻息荒い。
「選手は従業員じゃない。ファミリーの一員だ。だからベテランたちにも残ってもらった。セリエAでもやれるということを彼らに見せてほしい。下馬評を覆してほしい」
溺れそうになった会長をDFマッゾッキが助け出す
2020年の冬に会長職に就いたニーデラウアーは、元NY証券取引所社長の肩書を持つウォール街の大物ながら、5月のチッタデッラとの決戦にかけつけると、昇格決定直後に幅20メートルはあるスタジアム脇の水路に飛び込んだ。
どうしようもなく嬉しいとき水に飛び込みたくなるのは、洋の東西を問わないらしい。還暦過ぎの会長の無茶ぶりに、見守っていた数百人のファンはやんやの喝采を送った。
しかし、思わぬ水の冷たさに驚いた会長は危うく溺れそうになり、いち早く夜の水路に飛び込んだDFマッゾッキが会長を助け出した。それは、昇格をふいにしかねなかった試合前半の退場劇を帳消しにするファインプレーだった。
昇格の翌日、上機嫌の会長は仰天公約をしている。
セリエA残留成功の暁には「再び飛び込む」のだとか。しかも、今度はスタジアム脇の水路じゃない。ベネツィアの“目抜き通り”にあたる最大の運河「カナル・グランデ」に飛び込むというのだ。
ベネツィア復活を叫びながら、喜色満面で身を投じる会長を見てみたい。
水の都は19年ぶりの夢舞台に飛び込む。