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ユーべに帰ってきた“非情”のアッレグリの揺るぎない哲学 スクデット奪還へ「もはやロナウドを特別扱いしない」
posted2021/08/06 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ユベントスに名将アッレグリが帰ってきた。目的は明白。昨季失ったスクデットを取り戻すことだ。
復帰にあたり、名将は明言した。「もはやロナウドを特別扱いしない」と。捲土重来を期す名門は、この夏、静かに激動している。
美しいサッカーを望むユベンティーノは今さら皆無
2014年から5年の在任時に、リーグ5連覇を含め11冠を勝ち取った名指揮官アッレグリの復帰とあれば、派手な歓迎セレモニーがあっても良さそうなものだが、7月14日のプレシーズンキャンプ始動後も“老貴婦人”は不気味にも沈黙を保った。
ようやくアッレグリが就任後初の正式会見に臨んだのは、キャンプも2週目が終わろうとする7月27日のことだ。
2年の充電期間があったとはいえブランクは感じられず、むしろ不在期間などなかったように勝手知ったるコンティナッサ練習場でコーチングの笛を吹いているアッレグリは、何も変わっていないように見える。
低く構えて守る。パスは縦方向へ。ゲーム運びのリスクは最小に。
記者や選手、ファンの脳裏には、アッレグリの望むチームが刷り込まれている。美しいサッカーを見せてくれ、と望むユベンティーノは今さら皆無だろう。
「過去何年にもわたってセリエAを制してきたのは、最も堅い守備をもったチームだ」
5連覇監督は第2次政権を始めるにあたり、“タイトルを獲ってきたのは自分のチームである”と自負心をのぞかせつつ、個々の選手たちへメッセージを送った。それは、今季の実質的なチーム指針だった。
キエッリーニとボヌッチにも安穏を許さない
真っ先に名指しされたのはロナウドだ。
新指揮官は過去3年の実績を評価した上で「今季のチームでは、全体の1人とみなす」と通告した。
「(36歳という)年齢に見合った責任ある態度を見せてもらう。多くの経験を持つ彼にはチームリーダーの役割を期待している」
スタメンフル出場を確約する“王様”特権はなくなる。その代わり、チームの精神的な支柱になれ、と説いているのだ。
不世出のストライカーであるロナウドは、強力な得点源であると同時に彼への依存症を誘発する遠因になる。