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《波乱の地方大会》「親子でやってるから負けたんだ」“絶対王者”山梨学院5連覇できず…バッシングされた監督の告白 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2021/08/25 17:03

《波乱の地方大会》「親子でやってるから負けたんだ」“絶対王者”山梨学院5連覇できず…バッシングされた監督の告白<Number Web> photograph by Genki Taguchi

山梨大会5連覇を逃した山梨学院。新チームでの練習が始まっている

 吉田が苦笑交じりで狙いを説明する。

「秋と春は3年生中心のチームで負けましたから、このままだと夏もヤバいな、と。一度チームをフラットにする必要があったんです」

 実力で言えば、今年は下級生のほうが上だった。次の世代を見据えるのなら1、2年生を監督が担当してもいいはず。それでも吉田が3年生を見届けたのは、部長を信じていたからであり、「夏は3年生の大会」という理念に基づき、心技体を万全の状態で迎えてもらいたかったからだ。

 練習試合で吉田は、実力関係なく多くの選手を起用した。「いい雰囲気になってきた」と監督が目じりを下げるほど、夏を迎える頃にはチームに連帯感が生まれていた。

 部長と本音の情報交換をしながらレギュラーを選んだ結果、9人中7人が1、2年生。ただ、20人のベンチ入りメンバーのうち12人が3年生だった。

 秋に負け、春は大敗したことで、夏の大会前には選手たちに挑戦者の意識が根付く。「連覇のプレッシャーは、そこまで大きくなかったんじゃないかな」と監督が分析するほど、気負いなく本番に臨めたはずだった。

「あってはいけないプレー」

 しかし、夏の絶対王者の終焉は、意外なほどあっけなかった。

 富士学苑との準決勝。9回に2点を勝ち越されて迎えたその裏、山梨学院は1死一塁としたところで、立て続けに3年生の代打を送り満塁に。逆転サヨナラのチャンスを作った。

 監督がさらに動く。ピッチャーの打席で代打に指名したのは、背番号「10」の主将・針尾俊佑だった。王者のプライドを示す、最高の見せ場が整っていた。ただ――。

 まさかのプレー。それは、カウント1ストライク後に訪れた。相手エースがセットポジションから右腕を振る。ボールはバッターではなく、サードに投じられていた。

 牽制アウト。三塁ランナーは1年生だった。

【次ページ】 「あってはいけないプレー」

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