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《波乱の地方大会》「親子でやってるから負けたんだ」“絶対王者”山梨学院5連覇できず…バッシングされた監督の告白
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2021/08/25 17:03
山梨大会5連覇を逃した山梨学院。新チームでの練習が始まっている
「あり得ないこと、あってはいけないプレーが実際に起きてしまった。でも、富士学苑は三塁牽制を作戦として取り入れていて、実際に他のチームは結構やられていたみたいなんです。でも、私は知らなかった。しかも、牽制でアウトになった後、今までの自分ならタイムをかけて、針尾に『切り替えろ。お前に長打が出れば同点だぞ。諦めるなよ!』って伝令を送っていたのにやらなかった……」
2死一、二塁。事実上ここで勝負は決した。
針尾は次のボールでショートゴロに倒れた。2-4。山梨学院の夏は終わった。
「今年の夏は勝ちにいきました。負けましたけど、全力で勝ちにいきました」
油断や慢心からのスタートを自認した吉田の、リベンジでもあった。それが叶わず、連覇が途絶えた。今ならば理解できる。
「神様からのメッセージなのかなって。バタバタしていた1年間を象徴するような終わり方だったものですから、『勝負師としてもっと成長しなさい』と教えられたようでした。これからはさらに、1試合、1試合、絶対に油断することなく、負けたとしても後悔がないように戦っていきます」
吉田に突きつけられた現実と教訓。
24歳の若き参謀の健人も、父であり監督の背中から意志を感じ、自戒し、前を向く。
「僕も責任を感じています。富士学苑で言えば、『もっとピッチャーの情報を集められたはずなのに。そうすれば、あんな結果にならなかったのに』とか。勝てていた今までなら気づけなかったことを、今回の負けで気づかされたと思っています。新チームもまだまだ未熟ですけど、今のうちはみんなそれをわかっていますから。あとは勝つだけです」
山梨の王者の物語は、新章に突入した。
3年生の無念を知る後輩。親子が束ねるチームが目指すのは、連覇ではなく全国の頂だ。
日本一の名峰を望む地で誓う。
山梨学院は、もう隙を見せないと。
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