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《波乱の地方大会》「親子でやってるから負けたんだ」“絶対王者”山梨学院5連覇できず…バッシングされた監督の告白 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2021/08/25 17:03

《波乱の地方大会》「親子でやってるから負けたんだ」“絶対王者”山梨学院5連覇できず…バッシングされた監督の告白<Number Web> photograph by Genki Taguchi

山梨大会5連覇を逃した山梨学院。新チームでの練習が始まっている

 吉田は「本来なら送りバントで繋いでいかないといけない場面で、強攻策でいったり。強引だった」と反省するが、「親子だから負ける」というアンチの声が呪いのように吉田につきまとい、野球勘を狂わせたのも事実だ。

「秋につまずいた時から親子でやっていることを突っつかれて。チームのためにやっていることを世間から批判されるのが解せないし、苦しいというか。すっきりしません」

 吉田がそう訴えたのは、幼稚園から大学までを運営する学校法人山梨学院(C2C Global Education Japan)の前理事長で、現在は特別顧問の古屋忠彦だった。

 清峰を指揮していた頃から「うちで監督を」と、山梨学院大のOBでもある吉田に声をかけ続けてくれていた、いうなれば恩人からの返答は、想像を超えていた。

「親子の監督と部長で日本一になったチームって、あるのかな?」

 まずないよな――ぼんやりと考えている間に、古屋から願望を伝えられた。

「優勝できれば、こんな素敵な話はないじゃないか。山梨学院は親子が監督と部長のチームで日本一を目指そう」

チームを一度壊す

 さらに、古屋の息子で現理事長の光司からも、「困っていることはありませんか?」と尋ねられ、吉田は設備面の拡充を要望。寮の増設にブルペンの新装などを快諾した、学校のバックアップも心強かった。

 心のわだかまりが、溶けた。吉田が言う。

「気分が晴れた。特別顧問の言葉で、どれだけ救われたか。理事長のご厚意もそうですよ。経営者からすれば、負け続けたら怒りたいじゃないですか。それなのに、おふたりは後押ししてくれて。春が終わって、やっと周囲の雑音を閉じることができました」

 長き迷いから解放された吉田は、夏へ向け思い切った改革に着手した。

 それは、チームを一度壊すこと。

 吉田は5月上旬から6月までの約2カ月間、「1、2年生」と「3年生」にチームを振り分けた。下級生は部長、3年生は監督が指揮し、両者でブレストを重ねて、実力重視で夏のメンバーを決める。初めての試みだった。

「うちにとって、ピンチがずっと続いていましたからね」

【次ページ】 チームを1度壊す

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