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《ラグビー》“親分”の負傷、集団感染、HCの場外乱闘? トラブル続きのライオンズ南ア遠征、最後は“デジャブ”で決着
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/08/15 17:00
南アフリカとの三番勝負に負け越したブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ
一方、ライオンズを待ち受ける南アフリカも万全な大勢とは言えない状況が続いていた。優勝した19年W杯以降、ライオンズ戦に向けた準備合宿まで代表活動が制限されてきたのだ。
当初はジョージア代表と2試合のテストマッチを組んでいたが、第2戦を前に両チームから合計14人の感染者がでたことで、あえなく中止に。こうした事情もあり、南アフリカは14日の“南アフリカA”vs.ライオンズの試合に、SHファフ・デクラークを含むフル代表の主力選手を投入。南アフリカAが勝利をもぎ取ることになった。
それぞれ計画通りとはいかなかったが、この試合が“ラスト3試合”への注目度を高めるきっかけにもなったのが、また皮肉でもある。
「巨漢の親分」が復帰、初戦に勝利
さらに、ライオンズに追い風が吹いた。
ウォーレン・ガットランド監督が「最高のシナリオでテストマッチに間に合うかどうか、というレベルのものです」と答えていた主将ジョーンズが、驚異的な回復力を見せ、最高の場面でチームに復帰することになった。
主将の役割も引き継いでいたSHコナー・マレー(アイルランド)から再びジョーンズへと戻され、これについてガットランド監督は「両選手共にこうすることがチームにとってベストだと分かっていた」と語っていた。
そもそも、今回が4度目のライオンズ遠征参加となるジョーンズは、2009年から実に12年間も欧州ラグビー界のトップ選手とし君臨し続ける、35歳の生きるレジェンドだ。ウェールズの田舎町出身で、「素朴でいい奴」という人柄で知られるが、グラウンド上での体を張った激しいプレーは、まさに「巨漢の親分」。
そんな頼もしい男はスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)とのテストマッチ初戦でも力強いリーダーシップを発揮し、白星スタートの原動力となった。
さらにこの試合ではジョーンズと同じウェールズ代表のSOダン・ビガーの正確なキックも光った。効果的に陣地を奪えたことが勝因だが、ハイパントキックでアンストラクチャーなシーンを作り出し、南アの快速WTBチェスリン・コルビ(171cm/80kg)に対して、193cm、105kgの巨漢WTBドゥハン・ファンデルメルヴァ(スコットランド)を空中で競らせるという、あからさまな戦術も機能。まさにライオンズ側の意図通りに試合が進んだと言えるだろう。