甲子園の風BACK NUMBER
《高校野球》神奈川はいつも完売? スカウトも見る“地方大会のパンフレット” 充実の出来は新潟と長崎、大阪は…
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/09 17:01
3年ぶり19度目の甲子園出場に沸く横浜高校。神奈川は高校野球の人気どころとあって毎年、パンフレットは売り切れ必至
この中で圧倒的な情報量を誇るのが、新潟と長崎だ。
多くの地区で掲載されているのはベンチ入りメンバーまでというケースが多いが、この2地区に関しては登録されている全選手の学年、身長、体重、投打に加えて、出身中学(県外の場合はその都道府県まで)、ポジション(投、捕、内、外の形式)まで掲載されているのだ。今年入手できたパンフレットにおいて、ここまで選手の情報が充実していたのはこの2冊だけである。
これだけの情報があれば、下級生の頃と3年生になった時の数字を比較することも可能になり、その選手の成長度合いを判断するのにも役立つのだ。地方大会で一緒になったスカウトともパンフレットの話になることがあるが、新潟と長崎に関してはやはり高評価だった。
選手や保護者にとっても記念になる
もちろん、筆者やスカウトのような見方をするケースは多数派ではないだろうが、選手や保護者にとっても記念として残るものであり、選手の情報は多い方がありがたいことは間違いないだろう。
関東では最初に紹介した神奈川、そして秋と春にも同じクオリティで発売している東京の充実ぶりが目立つ一方で、全国最多の甲子園優勝を誇る大阪で販売がなかったことは驚きでもあった。さまざまな事情があるとはいえ、実際にこの夏にパンフレットの販売がなかったことを残念がる声も少なくなかった。
野球熱の高さとパンフレットの充実ぶりが完全に比例しているとは言わないが、地方大会の観客の入りを見ても全体的に“東高西低”の感はあることは確かである。そんな中、新潟や長崎といった“地方”の高野連の努力は改めて評価したい。
コロナ禍の影響で各地の高野連の財政難が囁かれるが、高校野球や選手に興味や関心を惹きつけるきっかけとなっているだけに今後も期待したいところ。さらなる充実は来年以降の楽しみにするとして、まずはこれから始まる球児たちの夏をしっかりと見届けたい。