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「9回無死満塁から…3者連続三振の好リリーフ」夏の甲子園にも“クローザー時代”が訪れるか《日大山形vs.米子東》
posted2021/08/10 18:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
今大会はこうした投手の登場を繰り返し見ることになるのだろう。
2年ぶりに開催された夏の甲子園の開幕戦は、1−4の9回表、米子東が無死満塁の好機を迎えるという緊迫した場面を迎えた。しかし日大山形のクローザー・滝口琉偉がマウンドに上がると、1番打者から3者連続三振に斬って試合を締めたのだった。
火消役を務めた滝口の姿は、プロ野球のクローザーを見るかのようだった。
「無死満塁でしたけど、自分が抑えるって強い気持ちでマウンドに上がりました。しっかり集中できたピッチングができて良かった」
大仕事をやってのけた滝口は自らのピッチングをそう振り返った。
「1週間500球」で変わりつつある甲子園
昨年はコロナの影響により開催されなかったが、甲子園は変わりつつある。今春のセンバツから本格導入された球数制限が背景にある。1週間500球という比較的緩やかな制度とはいえ、どのチームも複数投手を育成することを余儀なくされ、その結果として多くの投手が登板する機会が増えている。
今夏の地区大会においてエース1人の投手で勝ち上がってきたチームが2校しかいない事実がその証左と言えるだろう。
日大山形の荒木準也監督もこう話している。
「斎藤が先発で投げた試合で滝口につなぐ継投はいつもやっている。先発投手はゲームの流れを作れるタイプがいい。それで斎藤を起用していて、後半は目先を変えるために強いボールを投げるピッチャーがいいと。それで滝口にしました」
もっとも、こうした戦いは日大山形の今季のチームが守備重視であることも関係している。11安打4得点を挙げた攻撃はディレードスチールを決めるなど、多彩な攻めで確実に加点していったものだった。だが随所に光ったのは、堅固な守備だ。
9回12安打を浴びせてきた米子東は積極果敢だった。送りバントを使わず積極的に攻めてきて、3、6回は安打で走者を許したが、2度とも併殺で切り抜けている。荒木監督も「ウチは打ち勝つというよりも投手を中心に守りの野球をしています。今日は試合の流れを見ながら守り勝ったと思っています」と語っている。
「甲子園は投げやすい球場です」
とはいえ、序盤から確実に得点をあげた日大山形だったが、好機を作りながら追加点を取れず嫌な雰囲気もあった。その中で迎えた9回だった。