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「ジャパンにとってスペシャル・イヤーだ」22歳稲見萌寧、ゴルフ初の五輪メダル…4日間貫いた稲見流の攻略法とは? 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byShizuka Minami

posted2021/08/08 06:01

「ジャパンにとってスペシャル・イヤーだ」22歳稲見萌寧、ゴルフ初の五輪メダル…4日間貫いた稲見流の攻略法とは?<Number Web> photograph by Shizuka Minami

プレーオフの末、日本ゴルフ界で初のメダルとなる銀メダルを獲得した稲見萌寧

「日本で開催された五輪で、日本人がメダルを獲れて、嬉しかった。銅より銀のほうがいい。(18番の)自分のミスで金メダルはなくなったけど、しっかりメダルが獲れて良かったです」

 3人のメダリストが壇上に並んだ「メダリスト会見」で、稲見は初めてメダルが獲れたことを喜ぶ言葉を口にした。

 かつて、稲見にとっての五輪は「自分が出るとは思っていなかった。五輪に出ることは、すごいと思っていた」と振り返るほど、はるか彼方の憧れの存在だったそうだ。

 この五輪期間中、海外メディアから「なぜ、五輪に出たいと思ったか?」と問われたときは、「かっこいいから」と即答した。

 言葉だけにしてしまうと「すごい」「かっこいい」と、どこか軽い響きになってしまう。だが、稲見は憧れの舞台に立つために、ゴルフを始めるきっかけを与えてくれた亡き祖父から受け継いだ「忍耐」という座右の銘を胸に抱きつつ、努力と鍛錬を積み重ね、プロとして結果が出なかった間も、我慢の日々を笑顔で乗り越えてきた。

 2018年にプロテストをぎりぎりの20位で突破し、2019年に初優勝、2020年に2勝目、そして今年はシーズン5勝を挙げる快進撃を披露し、実力で掴み取った五輪出場権。

「メダルより、楽しみながら回りたい」

 稲見が唱え続けた「楽しむ」の真意は、なかなか掴み切れなかったが、これまでの蓄積を伸び伸びと開花させ、そのプロセスを人々に披露して魅了した稲見流の五輪への挑み方は、すべてが終わったとき、「ああ、楽しかった」と素直に思えるものだった。

世界に見せた「楽しみながら戦う」

 表彰台に立った稲見が、一回りも二回りも大きくなって見えた。

「日本開催の五輪でメダルが獲れたことは、人生において名誉なことです。まだ実感はないけど、これからゴルフを始める子どもたちが増えたらうれしい。ゴルフを始める人に夢を与えることができたかな」

 迷わず、「できた」と言ってあげたい。

 そして、自分を信じ、自分なりの流儀を貫き通して「楽しむゴルフの戦い方」を日本にも世界にも見せてくれた彼女に、心の底から拍手と「ありがとう」を贈りたい。

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