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「ジャパンにとってスペシャル・イヤーだ」22歳稲見萌寧、ゴルフ初の五輪メダル…4日間貫いた稲見流の攻略法とは?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byShizuka Minami
posted2021/08/08 06:01
プレーオフの末、日本ゴルフ界で初のメダルとなる銀メダルを獲得した稲見萌寧
いざ、最終日。稲見自身は「緊張はしない」「プレッシャーは感じない」と前日もきっぱり言い切っていたが、バーディーとボギーを繰り返した前半の出入りの激しいゴルフは、やはり緊張や動揺の表れなのではないのだろうか。そう思える展開だった。
しかし、実を言えば、稲見はメンタル面ではなくフィジカル面に問題を抱えていた。
「朝、スタート前に右の背中が少し痛くて、違和感があって、呼吸がしにくかったりと、スタート直前にいろいろあって、前半は少し上手くいかず、この位置(銀メダル獲得)に来るとは思っていなかった」
だが、「後半はパターが入ってくれた」おかげで12番からは4連続バーディーを奪い、首位を走る米国のネリー・コルダににじり寄っていった。
雷雨による一時中断を挟み、再開直後の17番でこの日9つ目のバーディーパットを沈めたとき、稲見は初めてコルダを捉え、金メダルの可能性に迫った。
「プレーオフ」の予感と自信
しかし、最終ホールの18番でグリーン手前のバンカーにつかまり、おまけにボールは「目玉」状態。ここでボギーを喫したことで、メダルの行方は最終組の3人の18番のプレーに委ねられ、パーで収めたコルダが金メダルを獲得。ニュージーランドのリディア・コと稲見が銀メダルと銅メダルを決するプレーオフへ突入した。
前日からプレーオフに自信を示していた稲見は、その通り、リオ五輪の銀メダリストであるコーに臆する様子を一切見せず、堂々とフェアウエイを捉え、グリーンを捉え、着実に2パットのパーで収めて、笑顔を覗かせた。
一方、コーはティショットがフェアウエイバンカーにつかまってパーオンに失敗。1.5メートルのパーパットがカップに沈まなかった瞬間、稲見の銀メダルが確定した。