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「ジャパンにとってスペシャル・イヤーだ」22歳稲見萌寧、ゴルフ初の五輪メダル…4日間貫いた稲見流の攻略法とは?
posted2021/08/08 06:01
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Shizuka Minami
「銀メダリスト、日本、稲見萌寧」
厳かなアナウンスが響き渡ると、稲見萌寧が2番目に高い表彰台に上がった。
霞ヶ関カンツリー俱楽部の18番グリーン脇で、米国の星条旗より少しだけ低いポジションで日の丸が揚がる光景を眺めていたら、感慨深い想いが込み上げてきた。
米国のTV中継では「モネ・イナミは米LPGAでプレーしていないので、アメリカでは知られていない存在。無名の彼女がこの五輪で銀メダルを獲得したことはサプライズであり、素晴らしい」と驚き混じりに紹介。
そして「今年はツバサ(梶谷翼)がオーガスタ女子アマチュアで優勝し、ヒデキ(松山英樹)がマスターズを制し、モネが五輪で銀メダルを獲得。ジャパンにとって今年はスペシャル・イヤーだ」と興奮気味に讃えた。
日本のゴルフ史に、また1つ、新たな歴史が刻まれた日。
2016年のリオ大会で112年ぶりにゴルフが五輪競技に復活するまでは、誰一人、想像すらしていなかった「ゴルフのメダル」を、この東京五輪で、22歳の稲見が堂々と手に入れ、笑顔を輝かせた。
何度も口にした「楽しく回りたい」
メダル獲得を逃した松山英樹から「男子は獲れなかったから、女子たちは頑張って」と開幕前に声をかけられた稲見は「うれしかったです」と素直に喜んでいた。
しかし、だからと言って、「メダルが獲れるよう頑張ります」とはならないところが、稲見流の挑み方だった。
「メダルより、自分の順位やスコアを1つでも上げたい」
開幕前も、初日も2日目も、首位と5打差の3位タイで3日目を終えたときも、稲見は頑固なまでに、一貫して、そう言った。
さらに稲見は「楽しく回りたい」とも言い続けた。
「一番楽しいのは、自分がスコアを伸ばして順位を上げていくゴルフ。見ている方も、やっている方も、それが一番楽しいと思うんですよね。だから、それがベストかな」
稲見が目指す「楽しむゴルフ」で、果たして最終日のメダル争いを乗り切ることはできるのか。稲見流の挑み方の終着点を、是非とも見たい、早く見たいと気持ちが逸った。