「メキシコ戦の敗退を重く受け止めるべき」中西哲生が分析する“日本が五輪やW杯で勝つために何が必要なのか？”

　ピッチ上で、涙がこぼれた。言葉を失った選手たちは座り込んだまま動けず、虚空を見つめ、それでもどうにかして互いに声を掛け合い、労った。選手たちがどれだけのものを背負い、どれだけの犠牲を払い、どれだけの思いで戦っていたのかが、試合後のピッチには表われていただろう。

　8月6日に行なわれた3位決定戦で、日本はメキシコに1対3で敗れた。前半にリスタートから2点を失い、後半もCKから失点した。それでも最後まで攻撃を仕掛け、途中出場の三笘薫が1点を返す。終盤はメキシコをゴール前にクギ付けにし、決定機を何度も作り出したが、53年ぶりのメダル獲得はならなかった。

　U-24日本代表として最後の戦いとなった一戦を、お馴染みの中西哲生氏に分析してもらう。久保建英らのパーソナルコーチを務める氏は、メキシコ戦の敗戦を日本サッカー変革のきっかけにしなければいけない、と語る。

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　3位決定戦ならではの難しさを感じた一戦でした。

　決勝進出を逃したという意味では、日本もメキシコも同じ立場です。連戦を消化してきた疲労感に加えて、喪失感にも襲われていたでしょう。モチベーションを回復するのが難しいなかで、メキシコのスタメンにハイメ・ロサーノ監督の狙いが読み取れました。

これまで途中出場だった「メキシコ10番」が先発に

　背番号10を着けるディエゴ・ライネスを、先発で使ってきたのです。ラ・リーガのベティスでプレーする彼は、グループリーグの第3戦、準々決勝、準決勝は途中出場でした。日本戦で時間の経過とともに長所を消されたことで、ロサーノ監督のなかで序列が変わったのかもしれません。代わって先発したウリエル・アントゥナが機能したことも、ライネスが先発から外れた理由だったかもしれません。

メキシコの10番、ディエゴ・ライネスの先発起用も日本を苦しめた　©JIJI PRESS

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　ところが、銅メダルのかかった試合で、ロサーノ監督は背番号10を先発に戻した。そこには、三つの理由があったと考えられます。

　ひとつ目は、ライネス自身の奮起を促すためです。「今度は結果を残してこい」というメッセージを込めた起用です。

　ふたつ目は、コンディションです。3試合連続で先発から外れていたライネスは、準決勝までのプレータイムが225分でした。5試合フル出場で480分プレーしてきた選手に比べれば、コンディションはフレッシュだったでしょう。

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