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宮本慎也、川崎宗則、西岡剛…世界を知る“達人”が心配する「三塁の守備」侍ジャパン村上宗隆の起用法は?
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKYODO
posted2021/07/27 11:03
強化合宿で、居残り練習をする(左から)源田、村上、鈴木誠、山田、菊池涼
同じく北京五輪に出場し、WBCでは2度の世界一を経験した川崎宗則も“三塁手”をキーワードに挙げ、村上の名前を口にした。
「国際大会はセカンドベース上にランナーが進んだ時のプレッシャーは物凄いものがあった。ランナー一塁の精神状態と、ランナー二塁の精神状態は全く違った。得点圏にランナーがいて点が入ってしまうかもしれないという重圧との闘い。だから野手の私たちは常に“長打警戒”。三塁と一塁はとにかくライン際を締める。
特に中南米のチームにいる右打者はかなり外寄りのボールでも引っ張ってくる。ひっかける打球も多い。だから三塁手の守備力は重要。村上選手は三塁線にへばりつくくらいのイメージでもいいくらい。最悪、三遊間を抜けてシングルヒットならOKくらいに考えてもいい。国際大会では内野は三塁手がキーですね」
川崎氏自身も国際大会の舞台で「三塁」の守備を経験し、日本人の打者とは違う右の強打者の打球処理、そして逆シングルでのグラブ捌きが難しかったと回想する。そして、何よりも得点圏にランナーを置く回数をいかに減らせるかが勝利へ向けてのポイントだと語った。
西岡剛「味方の特徴を知ること」
その川崎氏とWBCや五輪で二遊間を組み、内野の軸として若き時代から侍ジャパンを牽引してきた西岡剛は、「意思の疎通」と「味方を知ること」が最も重要と話す。
「ムネさん(川崎)なら、ゲッツーを取る時にどれくらいの速さで、どれくらいの強さで、二塁に投げてくれるかわかる。相手のプレーだけではなく自チームの各選手の特徴をどれだけ知っているか、理解できているかが大切。当時はとにかく会話をしていたし、試合中も常に話して、コミュニケーションを取っていた。
“ムネさん、この打者はもう一歩だけ二遊間詰めましょうよ”と僕が伝えたり、三遊間深めにムネさんが守備位置を変えたら“ツヨシ、ちょっと三遊間深めに行くからセカンドキャンバスよりの打球は頼むな”と言ってくれたり。こういう会話を常にグラウンド上で展開できるかどうかが国際大会は重要。データは頭には置いているけれど、実際に守ってみて感じることをどれだけ共有できるか。(優勝した2006年の)第1回WBCではそれができていた」
相手を知ると同時に自分たちをどれだけ知るかが、国際大会では必要であることは間違いないのだろう。
確かにアテネ五輪で活躍した高橋由伸氏や和田毅も“コミュニケーションを図り、全員が自己犠牲できるチームであること”が何よりも必要な要素かもいれない、と語っていた。3人の話にも通ずる部分がある。
誰もが“東京の地で金メダルをーー”と期待する稲葉ジャパンの船出。時間は限られるが、野球の技術だけではない、24人の意思統一が世界一への近道になる。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。