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中村憲剛に「僕は1年目から結果しか出してないですから」!? 三笘薫の“威風堂々”が次々にチャンスを作り出す
posted2021/07/22 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
息を切らしながらスポーツドリンクをグイグイと飲み干す。
俳優? モデル?
いやいや、某スポーツ飲料ブランドのイメージキャラクターとしてCMに出演しているのは川崎フロンターレの24歳、三笘薫である。自然かつクールにキメてみせている。
この人、何をやってもハマる。
今年の新体制発表会見でも感じたことだ。クラブオフィシャルスーツの紹介で中村憲剛FRO(フロンターレリレーションズオーガナイザー)と一緒にコントを披露。営業成績トップのビジネスマンを演じて「ねえ中村クン。もうゴールパフォーマンスなんて考えなくていいですからね。僕なんて1年目から結果しか出してないですから。結果出してください、結果!」と憎々しく畳み掛けるなど、サマになっていた。
本業以外のことをやる場合、照れや無理をしている感が伝わってくるものだが、彼にはそれが一切ない。畑違いの分野であっても落ち着いて全力で染まろうとする。自信がないように見せることはない。
相手を手玉に取るプレーと、どこか重なっている。
「“コイツ、何やってくるんだろう”っていう雰囲気を」
今シーズンの開幕前に話を聞いた際、彼がこのように語っていたことを思い出した。
「相手に“コイツ、プレーの選択肢がない”と思われてしまったら、自信を持って飛び込まれることだって多くなる。でも自分の視野を確保して周りを分かってさえいれば、ボールを扱う時間が長くなるし、相手にも“コイツ、何やってくるんだろう”っていう雰囲気を出せる」
CMやコントにおいての「観る側」を、プレーで三笘を「マークする立場」に置き換えてみればよく分かる。自信を持って、主導権を握って向かってくる三笘に飲みこまれてしまう錯覚に陥る。想定の上を飛び越えていくような。これでは容易に飛び込むことなどできない。
アウトサイドを使った独特の仕掛けというテクニックやリズムのみならず、この威風堂々が次々にチャンスをつくり出すファクターなのだと理解できる。
金メダルを目標に臨む東京オリンピック。大舞台だろうが平然と相手の守備を切り裂いていくはず。輝きを放つスケールとオーラは、まさに旬を迎えようとしている。