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「リーグ最低の先発投手」を覆して菊池雄星が覚醒に至るまで  “MLBオールスターに出る”目標設定と「すべてをぶっ壊した」挑戦 

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塩畑大輔

塩畑大輔Daisuke Shiohata

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photograph byNaoya Sanuki

posted2021/07/15 17:01

「リーグ最低の先発投手」を覆して菊池雄星が覚醒に至るまで  “MLBオールスターに出る”目標設定と「すべてをぶっ壊した」挑戦<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2019シーズン開幕前の菊池雄星。キャンプ時点で衝撃を受ける出来事があったという

投球機会が必要な中で吹いた2年目の逆風

 ただ、本人はこう捉えていた。

「11月から4カ月間、いい日と悪い日を繰り返しながら、ようやくあそこまでいけた。でも逆に言うと、少しだけ腕を上げることができましたね、くらいの感じでオフシーズンが終わってしまった」

 無意識にできるような次元には達していない。特に、実戦になれば相手もいる。アドレナリンも出る。その中でも、理想的な腕の振りができるか。反復練習で身体に学ばせるだけでは足りない。実戦を重ねることでしか追求できない領域になってくる。

 つまりは、場数が必要だった。

 例年にも増して。ほかの選手以上に。この年の菊池には投球機会が必要だった。だがそんな時に限って、逆風は吹く。

 2020年3月。全世界をコロナ禍が覆った。

「感染された方、飲食業の方など、本当に大変な思いをしている人もいるので、自分がどうだというつもりはまったくありません」

 菊池はそう言って首を振る。

 すべてのアスリートにとっての逆風でもある。メジャーリーグもレギュラーシーズンが、通常の162試合から60試合に短縮された。菊池も9試合しか先発登板できなかった。実戦の中で、新しいフォームを身体になじませる機会が、数えるほどしかもてなかった。

 それでも、秋口にはかなり投球がよくなった。浮上の糸口をつかんだようにも見えたが、あまりにもシーズンは短かった。

 菊池のメジャー2年目は、こうして終わってしまった。

“ある人”に会っていないことに気づいた

 周囲は「来季こそやれる」と期待を持った。ただ一方で「あと1、2カ月シーズンが続けば」と不運を嘆きもした。それは、サイ・ヤング賞候補にまで挙がったダルビッシュや前田健太と比較される向きがあったからかもしれない。だが、菊池はただただ自問自答していた。

「目標に掲げたオールスター出場を果たすために、すべてをやりつくしているのか」

 ふと、会うべき人にあっていないことに気づいた。他でもない。15年も前から「お前はメジャーのオールスターに出られる」と言ってくれていた人。

 2020年12月。菊池はその人と久々に再会する。

 そこで言われた一言が、菊池のその後を大きく変えることになる。

後編に続く。関連記事からもご覧になれます>

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