猛牛のささやきBACK NUMBER
「トライさんの技ですね」山本由伸&宮城大弥が信頼する伏見寅威のリード【大学時代は菅野智之の女房役】
posted2021/07/08 11:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
見慣れない数字が並ぶ今季のオリックス。
7月4日の西武戦の勝利で、パ・リーグ40勝一番乗りを果たし、貯金は11に。その後、9回に失点する嫌なかたちで楽天に連敗したが、まだ2位と2.5ゲーム差の首位にいる(7月7日時点)。
オリックス躍進の原動力となっているのは、好調な打線と、開幕から軸となってきた2人の若き先発投手、22歳のエース・山本由伸と、19歳の左腕・宮城大弥である。この2人が現在、パ・リーグの防御率と勝利数トップの座を争っている。
若い2人の能力が優れていることは言うまでもないが、投手の長所を活かし、新たな一面を引き出してピッチングの幅を広げる捕手・伏見寅威のリードも光る。3勝無敗で6月の月間MVPに輝いた山本は、「何球も先まで読んで配球してくれているなと感じます。トライさんの技ですね」と感謝する。
カーブで幅を広げる伏見
昨年から先発マスクを被る機会が増えた伏見のリードで印象的なのは、カーブの使い方だ。
現在、奪三振数も115でパ・リーグトップの山本は、今年、カーブで三振を取る場面が増えている。例えば、7回まで完全投球を見せた6月11日の広島戦では、自己最多の15三振を積み重ねたが、そのうち約半分がカーブで奪ったものだった。試合後、山本はこう語っていた。
「カーブっていうのはすごく特徴があるというか、僕のピッチングでは、投げる場面が大事なボールになるんですけど、それをトライさんがうまく使って、フォークフォークにならないようにリードしてくれて、カーブで結構三振も取れました。本当にいいリードをしていただいたので、おかげさまですね。最近カーブの状態がよくなっていて、たぶんトライさんもそれに気づいて、カーブで行ったのかなと。トライさんの察知能力ですね」
現在、1.94の山本に次ぐ2位の防御率1.96で、両リーグトップの9勝(1敗)を挙げている宮城に対しても、伏見は100キロ前後のゆるいカーブを要所で使って緩急を際立たせ、打者を翻弄している。