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崩壊寸前からの鮮烈な復活劇 スター不在で華麗さもなく、チャンスメイクも不得手なチェコはなぜEUROで躍進できたのか? 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/07/07 11:04

崩壊寸前からの鮮烈な復活劇 スター不在で華麗さもなく、チャンスメイクも不得手なチェコはなぜEUROで躍進できたのか?<Number Web> photograph by Getty Images

オランダを撃破しベスト8進出を果たしたチェコ。ハードワークを基調とした組織的な戦いで、サッカーの本質を見せつけた

 実際、チェコのスタジアムはサッカーを楽しむ人が集まる場所ではなくなっていった。酒を浴びるように飲み、日頃のうっ憤を晴らそうとする人のための場所になってしまっていた。彼らの多くは暴徒と化し、問題を起こすことも少なくない。観客数は一層下がり続け、コントロールを失ってしまっていた。

 ある試合では、酔っぱらった状態で笛を吹いたとして処分された審判もいた。模範的な存在であるべきはずのトップリーグの選手たちが感情をコントロールできず、暴言を吐き、侮辱的な発言をし、処分されるというニュースもあった。

 問題はさらに深刻化する。

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「母国リーグがダメなら国外!」と、若手に代理人がどんどん声をかけていく。ただ実力に見合った移籍先を探し出してくれるわけではない。移籍はしたものの、出場機会を得ることができずに苦しむ選手が続出したという。

スラビア・プラハのスタイルが良い影響を及ぼす

 そんなチェコサッカー界がターニングポイントを迎えた。

 名門クラブのスラビア・プラハの経営が悪化し、2011年頃には崩壊直前までいったが、2016年に中国系スポンサーの投資を受けて破産を免れたのだ。

 金銭面でのサポートや抜本的な運営方針が整理されたことに加え、現場では自分たちが取り組むべきことを明確にし、具体的なプレーコンセプトで欧州の舞台でも対等に戦えるサッカーを浸透させようとし始めたことが大きかった。

 2018-19シーズン、スラビア・プラハはクラブ史上初となるリーグとカップとの2冠を達成する。監督はジンドリック・トルピソフスキ。プロ選手としての経歴はなかったが、その手腕はユルゲン・クロップを彷彿とさせる。

 高いインテンシティの下で素早いプレーを要求し、ボールを走らせ、奪われたらすぐに奪い返すためにプレスへ行く。個々の力では欧州トップレベルに太刀打ちできないからと、集団で戦うことの完成度を上げることに注力した。

 ここに興味深い数字がある。

【次ページ】 「僕らは仲間のために汗をかけるチームだ」

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