球道雑記BACK NUMBER
あのドラ1は今…「当時の自分をボコボコに」“二刀流”候補だった元ロッテ柳田将利、わずか3年のプロ人生で最初についた嘘とは
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKYODO
posted2021/07/09 11:02
2005年夏の甲子園でホームランを放ち、ガッツポーズを見せる青森山田の柳田将利。ドラフト1位でロッテに入団するも、わずか3年でプロ野球界を去った
取材が終盤に差し掛かると、柳田さんは長年、胸につかえていたものがとれたように安堵した表情を浮かべた。
「今までの取材って、どこかまだ(自分に)プライドが残っていて、あの3年間を怪我のせいにしていたんです。でも、実際のところ、それは言い訳でしかない。やらなければいけないことを疎かにしたから、怪我が生じたんだと自分でも分かっているんです。それをこれまでは言えなかった……。
でも今回、自分の口から言えてスッキリしました。これまでは、ファンの人に素直に話したらガッカリされるのが怖かったし、中には『やっぱり一生懸命やっていなかったんかい』と思う人もいるじゃないですか。それに『怪我がなかったらもっと(上まで)行ってたのにな』と言ってくれる人もいたんで、そういう人を裏切るぐらいなら嘘をついたままの方がええな、とかね。それがずっとしんどかったです」
最後に柳田さんが言った。
「今が一番幸せですね。明日の方がもっと良くなるし、いつもそう考えて生きているので」
プロという厳しい世界で、少し道を外してしまったかもしれない。それでも、今こうやって過去の自分を振り返れるようになった。この経験が活きた教材となり、これからを担う若い世代のためになったら……。柳田さんの笑顔を見て、心からそう思った。