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《ドラフト中間予想》野手“ドラ1候補”ベスト10、なぜ私はJR四国の“無名”20歳ショートを4位に推したか?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/06/29 11:04
筆者がドラフト候補中間予想・野手編【4位】に挙げた水野達稀(JR四国・遊撃手・170cm71kg・右投左打)
まず足が動いて、そのフットワークにうながされるように上体が動く流麗な全身連動も王道のフィールディングスタイル。トヨタ自動車の頃の源田壮亮(現・西武)が重なって見える。
「中野(阪神)、小深田(楽天)、源田(西武)」の系譜
昨年の都市対抗、NTT東日本との試合。
そのフィールディングで、水野達稀がわずかに「幼さ」を見せた場面があった。
左打席からどん詰まりのゴロが二塁ベース方向に鈍く転がる。ヨッシャ!とばかりにダッシュした水野、捕球したか……と思った瞬間、打球はグラブの下を抜けて行った。
間に合っていた打球。しかし、捕球より一瞬早く、水野遊撃手の視線は、打者走者の上川畑大悟(24歳、日本大)の「走り」のほうに向けられていた。ボールから一瞬目を切ったがための捕球ミス。
内角速球に詰まった上川畑。スタートから猛烈な勢いの全力疾走をかけていた。50m6秒を切るオレが本気で走れば、若い水野は必ずあわてる……同じポジションを守る者だからこそ察知できる相手の心理。
逸材・水野達稀が「社会人の駆け引き」に敗れた場面だった。それでも、同じイニング、ショート左を襲った強烈なゴロが最後にポーンと跳ねたのに鋭く反応。6ー4ー3の併殺に持ち込んだあたりの「立て直し能力」など、やっぱりモノが違う。
話していけば、キリがない。
雨で延びなければ、7月3日の第3試合、相手は三菱重工West。現場でご覧になれる方はぜひご注目を。
突き抜けたセンスを持った者は、より高いレベルに置いたときほど、その輝きを増す。今季は、阪神の社会人ルーキー・中野拓夢(三菱自動車岡崎)が「遊撃」のレギュラーに定着してセ・リーグ首位独走の原動力の一翼となり、その前は、楽天のドラフト1位・小深田大翔遊撃手(大阪ガス)がリードオフマンとして働き、さらにその前には、西武・源田壮亮の活躍があった。
そんな社会人野球の先輩遊撃手に続く……というより、むしろ追い越していきそうな才能の塊が、今季の社会人球界に潜む。
【ドラフト中間予想】野手候補4位にふさわしい活躍を……などと小さなことは言わない。この国の社会人球界という「肥沃な土壌」から存分に栄養を吸収し、球史に残るような「ショートストップ」になってみせてほしい。