病気に勝ってほしい、奇跡を起こしてほしい。

　高橋は日本でずっとずっと祈っていた。SNSで仕事の話を振るのも、希望を持ってほしいためだ。だから自分が希望を持った。日本と韓国で一緒に仕事をするという目標を持った。

　サンチョルは天国に旅立った。

「そこまでは無理だろうっていうことをあの人はやっちゃうんですよ」

　半信半疑は、続いている。第一報に接してからも、数日経っても、1週間が過ぎても。

　彼がいかに頑張ったか、いかに耐えたかは理解できる。ただただ、事実を受け止めたくない、その一心だけだ。

　高橋は言葉に詰まりながらも、静かにこう語る。

「試合で彼がどれだけ闘ってきたかは、サポーターの人は知っています。そこまでは無理だろうっていうことをあの人はやっちゃうんですよ。意志の強さは選手もチームの人もサポーターも、僕も知っています。だから病気との闘いだって、ひょっとしてって思うわけです。サンチョルは、本当に凄い人ですから」

　ユ・サンチョルを高橋建登は誇りに思う。

　これからも彼を思う人々の心のなかで、ユ・サンチョルは生き続ける。