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【追悼】“超人的に頑張る男”ユ・サンチョルが日本で一度だけ流した「悔し涙」…通訳が明かす“兄貴分”の素顔
 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/06/24 11:00

【追悼】“超人的に頑張る男”ユ・サンチョルが日本で一度だけ流した「悔し涙」…通訳が明かす“兄貴分”の素顔<Number Web> photograph by J.LEAGUE

13日のルヴァン杯、横浜F・マリノス×北海道コンサドーレ札幌の試合前には、ユ・サンチョルさんをしのんで、黙とうがささげられた。

 ババンバ、バンバンバン、「ユ・サンチョル!」

 ババンバ、バンバンバン、「ユ・サンチョル!」

 試合が終わってから、サンチョルは現役時代と同じように正面ゲートから階段をのぼって、チャントが響き渡るゴール裏のサポーター席へと向かった。しっかりとした足取りだった。

 マイクを渡された彼は、高橋を通じて感謝の言葉を伝えた。

「私は絶対にあきらめないです」

「こうやって大勢のファンのみなさんがいると、昔を思い出しました。実は私、今、体が良くありません。ですけど、遠いところから僕のことを応援してくれているんだと知って、挨拶したいという思いでここにきて、そしてたくさんの力をもらいました。

 ACLの全北現代との試合をテレビで観ていたら横断幕が目に入ってきて、本当にびっくりしたんです。うれしかったんです。(全北の)会場には体調が良くなくて行けなくて、きょう僕がプレーしたここに来たいという思いでここに来ることができました。私は絶対にあきらめないです。しっかり治療して、そしてこのスタジアムに戻ってみなさんとお会いしたいなと思います。みなさんもしっかり健康でいていただきたいなと思います」

 高橋はうれしかった。サポーターがこれだけサンチョルを愛してくれていることを。サンチョルが絶対にあきらめないと言ってくれたことを。

 日本では常に一緒にいた。昔のサンチョルと何も変わらなかった。違った点は一つだけ、朝昼晩と10錠以上の薬を飲んでいたこと。本当にそれだけだった。

 空港で再会を約束して別れる際、ちょっとした変化を感じたという。

「病気に負けない、っていう思いを強くしたんじゃないですかね。そういう頼もしいというか、力強い表情で韓国に帰っていきましたから」

病気に勝ってほしい、奇跡を起こしてほしい。

 サンチョルは再び日本のファン、サポーターに会えないと思って、無理をして来たんじゃないかと最初は思った。だが、違った。病気との闘いに勝つ力をもっと身につけるために、やってきたんだ、と思えた。

【次ページ】 「そこまでは無理だろうっていうことをあの人はやっちゃうんですよ」

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